タイトル |
花たたき法によるナスのアザミウマ類成虫の生息密度推定および被害解析 |
担当機関 |
大阪農総研 |
研究期間 |
2000~2006 |
研究担当者 |
久保田知美(病害虫防除所)
柴尾 学
辻野 護(病害虫防除所)
田中 寛
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
チャック付ポリ袋内でナスの花を指で所定回数たたいてアザミウマ類成虫を袋内に落下させる花たたき法により捕獲虫数を調査することで、花におけるアザミウマ類成虫の生息密度が推定でき、被害解析を行うことができる。
|
キーワード |
アザミウマ類成虫、ナス、花たたき法、捕獲効率、被害解析
|
背景・ねらい |
ナスでは複数種のアザミウマ類が発生するが、とくにミカンキイロアザミウマは品種水なすの果実に脱色白斑点症状を引き起こし、商品価値を低下させる。この症状は雌成虫が花に集まり、子房部分に産卵することで引き起こされる。そこで、チャック付ポリ袋内でナスの花を指でたたいてアザミウマ類成虫を捕獲する方法によりアザミウマ類成虫の生息密度を推定し、捕獲虫数と果実被害との関係を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- チャック付ポリ袋を用いたアザミウマ類成虫の生息密度推定(以下、花たたき法という)は以下の手順で行う。ナスの花にチャック付ポリ袋を被せ、袋内で花を所定回数たたいてアザミウマ類成虫を袋内に落下させて捕獲する。50%エタノール溶液で袋内のアザミウマ類成虫を洗い出し、捕獲虫数を実体顕微鏡下で種別に調査する。
- 露地栽培ナスにおいて花たたき法による花たたき回数を3回、5回、6回、10回に設定した場合のアザミウマ類成虫の捕獲虫数と、直後に花内に残ったアザミウマ類成虫の残存虫数を調査すると、アザミウマ類成虫(ヒラズハナアザミウマ優占)の捕獲効率は3回が50%、5回が67%、6回が68%、10回が84%である(表1)。
- アザミウマ類成虫の捕獲効率と花たたき回数の関係を求めると、両者の間には有意な正の相関関係が認められ、花をたたく回数が多くなれば捕獲効率が高くなる(図1)。したがって、花たたき法では調査時の花たたき回数を一定にすることで、アザミウマ類成虫の捕獲虫数から花における生息密度を推定できる。
- 岸和田市の露地栽培水なす2圃場において、2000~2005年6~7月の調査時(n回調査時)の花たたき法(60花調査、花たたき回数5回)によるミカンキイロアザミウマ成虫の捕獲虫数と次回調査時(n+1回調査時)の被害果率(50果実調査)の関係を求めると、有意な正の相関関係が認められ、捕獲虫数が多くなれば被害果率は高くなる(図2)。したがって、被害果率20%に対する花たたき法によるミカンキイロアザミウマ成虫の被害許容水準は10花当たり12個体と推定される。
|
成果の活用面・留意点 |
- チャック付ポリ袋を用意するだけで作業は容易であり、現地圃場における生息密度を効率的に調査できる。
- ミナミキイロアザミウマなど他のアザミウマ類に対しても本方法は有効であると考えられるが、種類によって捕獲効率が異なる可能性がある。なお、アザミウマ類幼虫の捕獲効率は成虫と比較して低く、捕獲効率と花たたき回数との間には有意な相関関係が認められないことから、アザミウマ類幼虫での本方法の利用は困難である(データ省略)。
- ナス以外の果菜類の花に生息するアザミウマ類に対しても本方法は有効であると考えられるが、寄主植物によって捕獲効率が異なる可能性がある。
- 花に生息するアザミウマ類の捕食性天敵ヒメハナカメムシ類に対しても本方法は有効であり、現地圃場における生息密度を効率的に調査できる(データ省略)。
|
図表1 |
|
カテゴリ |
病害虫
カメムシ
なす
ヒラズハナアザミウマ
品種
ミナミキイロアザミウマ
|