タイトル |
急傾斜石積み階段園における動力運搬車導入のためのスロープ設置技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
田中宏明
中元陽一
大黒正道
畔柳武司
角川 修
堀田宗幹(和歌山農総セ)
大橋弘和(和歌山農総セ)
細平正人(和歌山農総セ)
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発行年度 |
2007 |
要約 |
重機が導入できない急傾斜石積み階段園における小規模園地改造法である。圃場端にスロープを設置することにより、石積みを崩すことなく小型機械をテラス間移動させることができるので、動力運搬車を導入して運搬作業の軽労化をはかることができる。
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キーワード |
カンキツ、急傾斜石積み階段園、テラス間移動、スロープ、動力運搬車
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背景・ねらい |
急傾斜石積み階段カンキツ園では排水や日照の良さから高品質な果実が生産されているが、テラス間に石垣があるため、モノレール以外の機械導入は困難である。このため、収穫果実の等高線方向の運搬作業は、依然人力により行われているのが現状であり、重労働となっている。また、園内道造成など重機を用いた園地改造法は作業の安全性や石積みを崩すことへの抵抗感により、一部の園地を除いては適用できない。そこで、急傾斜石積み階段園へ運搬車を導入し、軽労化をはかるための新たな園地改造法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 本技術は、これまで石積み階段園での機械化の阻害要因となっていた機械のテラス間移動を、スロープを設置することにより可能としたものであり、重機を用いたり石積みを崩すことなく実現できる小規模園地改造法である(図1)。
- スロープは、直交クランプや足場用鋼管など、市販の資材を用いて構成される。施工には溶接等の専門技術は用いず、インパクトレンチなど簡易な電動工具を用いて現場で製作できる(図2)。施工時間は4人組作業で1基当たり約5.5時間である。
- スロープは勾配20°以下とし、進入口の幅は75cm、上段テラスとの接続部に2m四方の天板を備えた形状である。テラス幅2.5m以上、石積み高さ2.0m以下のテラスに適用でき、モノレール軌条と反対側の圃場末端にスロープ全長分のスペース(石積み高さ150cmで約6m)を確保して設置する。この他、テラス内には幅1m程度の走行通路および旋回のための空間を適宜設ける。
- 本スロープを設置することにより、小型機械を安全にテラス間移動させることができる。これにより、クローラ外幅60cmクラスの動力付運搬車を導入することが可能となり、これまで重労働であった等高線方向の運搬作業が軽労化される(図2、表1)。
- スロープ設置に必要な資材費は石積み高さ150cmのとき1段当たり約9万円であり、スロープ1基当たりの受益面積はテラスの幅や長さにより異なる。テラス長さ50m、テラス幅2.5~7mのとき、10a当たりのスロープ設置数は2~7基となり、資材費用は約20~60万円である(図3)。
- 急傾斜階段園の運搬作業を軽労化する園地改造法として活用できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 急傾斜階段園の運搬作業を軽労化する園地改造法として活用できる。
- 生産者自らがスロープを製作・設置できるよう、組み立て方法や留意点を解説したマニュアルを発行予定である。なお、設置作業は安全のため必ず複数人数で行う。
- 運搬車を導入することで改植時の伐採木や苗木の運搬が軽労化されるので、スロープ設置と改植を交互に行い、部分的に園地改造を進める方法にも活用できる。
- 農道から園内へ運搬車の進入が困難な場合は、運搬車搬入用の支線レールを園内に1箇所設ける(平成19年度成果情報「クローラ運搬車による軽労化を目的とした緩傾斜階段園の小規模改造」を参照)。
- 資材価格は購入状況により異なるので参考値であることに注意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
改植
機械化
軽労化
その他のかんきつ
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