タイトル |
放牧が黒毛和種経産牛における腰最長筋の脂肪酸組成および共役リノール酸含量に及ぼす影響 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2006~2007 |
研究担当者 |
松本和典
柴田昌宏
小林英和
高橋佳孝
安藤貞
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発行年度 |
2007 |
要約 |
産次が進み繁殖供用を終えた黒毛和種経産牛を放牧で仕上げると、舎飼で肥育した場合や去勢牛と比べて、腰最長筋においてα-リノレン酸や共役リノール酸を多く含み、n-6系脂肪酸を過剰に含まない牛肉となる。
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キーワード |
放牧、黒毛和種、経産牛、脂肪酸組成、共役リノール酸
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背景・ねらい |
原油高による輸送コストの増大やバイオエタノールの需要増によって輸入飼料の価格が急騰しており、放牧を活用した土地循環型畜産の必要性が高まっている。また、繁殖供用の役目を終えた経産牛を放牧を活用した肥育に供することによって新たな付加価値を付与することができれば、生産現場および消費者双方のニーズに合致した牛肉の生産が期待できる。本研究では、放牧が黒毛和種去勢牛および経産牛における腰最長筋の脂肪酸組成および機能性成分である共役リノール酸含量に及ぼす影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 表1に試験区の設定を示す。放牧地はノシバ優占草地で、と殺月齢は去勢牛が24~25ヶ月齢、経産牛が132~165ヶ月齢とする。と畜、格付け、解体した後、腰最長筋および皮下脂肪を採取し、脂肪酸組成(腰最長筋のみ)および共役リノール酸含量(CLA,9-cis,11trans)を分析する。
- 牛肉の風味はオレイン酸の割合が多く、パルミチン酸やステアリン酸の割合が少ないほどよいとされている。パルミチン酸は去勢牛、経産牛ともに放牧によって減少する傾向にあり、オレイン酸は経産牛において放牧によって若干高くなる傾向にある(表2)。
- 日常の食生活において摂取されるn-6系脂肪酸/n-3系脂肪酸比は医学的に4程度が推奨されている。去勢牛舎飼区ではn-3系脂肪酸がほとんど含まれていないためn-6/n-3比は非常に高いが、去勢牛放牧区や経産牛舎飼区ではn-3系脂肪酸であるα-リノレン酸を含むため去勢牛舎飼区よりは低くなる。経産牛放牧区ではさらにα-リノレン酸が多く、またn-6系脂肪酸の大部分を占めるリノール酸が少ないため、n-6/n-3比は3.42となり、医学的に推奨されるレベルの牛肉となる(表2)。
- 腰最長筋中のCLA含量は去勢牛においては舎飼区と放牧区との間に差は認められないが、経産牛においては放牧区が舎飼区よりも約1.9倍高くなる。皮下脂肪においても同様の傾向が認められる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 産次が進み繁殖供用を終えた経産牛を放牧を活用して仕上げ肥育を行えば、脂肪酸組成の観点からヒトの健康によい牛肉を生産できる。
- CLA含量は去勢牛においても筋肉部位や放牧時期によっては放牧により若干高くなる場合もある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
機能性成分
コスト
肉牛
繁殖性改善
輸送
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