タイトル |
交雑で育成したサトイモ新品種「媛かぐや」 |
担当機関 |
愛媛農水研 |
研究期間 |
1993~2007 |
研究担当者 |
玉置 学
森川隆久
石々川英樹
淺海英記
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発行年度 |
2008 |
要約 |
「媛かぐや」は「筍芋」と「唐芋」のジベレリンによる開花処理・交雑と胚培養を利用して育成したサトイモ新品種である。親いもの形状は紡錘型で、重さは約1.4kgと大きく、粉質で糖濃度の高い親子兼用サトイモである。
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キーワード |
サトイモ、交雑、筍芋、唐芋、胚培養、加工
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背景・ねらい |
愛媛県はサトイモ栽培で出荷量が全国7位と近畿中国四国地域では最大の生産県である。主要品種は「愛媛農試V2号」であるが、産地からは食の多様化に対応し、新規需要につながるオリジナリティが高く、食材バリエーションを拡げる新品種育成の要望が大きいことから、「愛媛農試V2号」とは食味や形状、利用方法が異なるサトイモ品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- サトイモはジベレリンによる開花処理・交雑と胚培養を利用して、実用的な交雑個体を得ることができる。
- 「筍芋」と「唐芋」との交雑個体から選抜、育成した「媛かぐや」は、親と子いもを食べる晩生品種である。
- 地上部は「筍芋」と比べて、葉色がやや濃緑で葉柄頸部の屈曲がやや小さい。また、葉柄基部・頸部ともにアントシアン着色が濃い。「唐芋」と比べて、草丈が高く、葉柄頸部の屈曲がやや大きい。また、葉柄基部のアントシアン着色が濃い。栽培環境によって開花する場合もある。葉柄は食用可能である(表1、図1)。
- いも部は親いもの形状は紡錘型で「筍芋」と類似し、重さが約1,440gで、「筍芋」と比べて約40%重い。子いもの形状も紡錘型で1個重も約30%重い。「唐芋」と比べて、いもの形状が異なり、親いもで約80%、子いもで約200%重い(図2、表2)。
- 1株当たりの可販収量が約2,130gと多いこと(表2)、土寄せをしなくても、いもが十分に肥大するために土寄せ作業がほとんど必要ないこと、子・孫いも数が少なく、いもの着生形態が密生であるため収穫後の調製作業が少ないことから、他品種に比べて低コスト生産が可能である。
- 親いもの形状は均一で、肉質は粉質でペーストに加工しやすい。また、収穫後貯蔵した親いもの糖濃度は2.70g/100gFWで、「愛媛農試V2号」の1.06g/100gFWと比べて約3倍で甘みを強く感じる。糖組成はショ糖が2.18g/100gFWと全体の約80%を占め、他は単糖類のブドウ糖が0.36g/100gFW、果糖が0.17g/100gFWである(図2、表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 加工の事例としてコロッケやスイーツ等に利用できる。
- いもの着生数が少なく増殖率が低いため、切り芋栽培や大量増殖技術の導入が必要である。
- 草丈が高いため、強風地域での栽培は草丈を抑える栽培方法や風対策が必要である。
- 普及地域について、原則として、品種登録後3ヵ年は愛媛県内のみとする。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
加工
さといも
出荷調整
新品種
新品種育成
低コスト
品種
良食味
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