短日による日本型水稲品種の部分不稔の発生

タイトル 短日による日本型水稲品種の部分不稔の発生
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1998~1998
研究担当者 岡本正弘
小田俊介
寺内方克
小林真
出田収
松岡誠
長峰司(生物研)
発行年度 1998
要約 石垣島の水稲二期作および三期作において「日本晴」より晩生の多くの品種で部分不稔が発生する。この不稔は短日条件により葯が短縮し花粉数が減少するため生じるとみられる。国際農林水産業研究センター・沖縄支所・作物育種世代促進研究室
背景・ねらい 沖縄では亜熱帯気候を利用して稲雑種集団の世代促進栽培が行われている。しかし日本本土と比べて顕著な短日条件にある二期・三期作では、感光性の強い関東以西の普及品種では出穂が大幅に促進されるなど日本本土では見られない現象が観察されている。本研究では感光性の強い関東以西の普及品種で発生しやすい不稔の発生要因を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 石垣島の二期作および三期作では、本土において「日本晴」より晩生の多くの品種で部分不稔が発生する。不稔の発生は特に三期作で多い(表1)。
  2. 一定温度条件で月別に播種すると、「シンレイ」のように不稔の発生しやすい晩生種は6月播きの時点で葯が短く、9月播きではさらに短縮する。晩生種でも不稔発生が少ない「ユメヒカリ」は遅播きにより葯は短縮するが、いずれの播種期においても葯が「シンレイ」よりも長い(表2)。
  3. 「シンレイ」を短日下(9時間日長)で生育させると葯が歪曲・短縮化する(図1)。
  4. 「シンレイ」では葯の短縮化は、1)幼穂形成が過剰に促進された場合、2)生殖成長期間に短日処理された場合に生じる。短日により幼穂形成が早まっても、幼穂形成後に長日処理すると葯の短縮化は軽減するが、短日処理を続けると葯は著しく短縮する(図2)。
  5. 葯の短縮化により葯当たりの花粉数は820個から320個に減少し、不稔歩合は3%から28%に増加する(図2)。
  6. 「シンレイ」に正常の稔性を示す「コシヒカリ」を交配すると稔性は回復する(図表略)。
  7. 以上の結果、二期作や三期作においては、感光性の強い「シンレイ」では幼穂形成が著しく促進される上、幼穂形成後はさらに短日条件となることから、葯が大きく短縮化し花粉数が不足して部分不稔が生じると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. ここで観察される不稔は主に花粉数の減少によって引き起こされると考えられるため、現行の二期作や三期作栽培において、晩生品種では自然交雑による混種が起こる可能性がある。このため、不稔発生の月別変異を調べて不稔発生の少ない作期を策定する必要がある。
図表1 220776-1.gif
図表2 220776-2.gif
図表3 220776-3.gif
図表4 220776-4.gif
カテゴリ 亜熱帯 育種 水稲 播種 品種

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