タイトル | わが国で発生している全トスポウイルスの検出法 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
奥田 充 花田 薫 |
発行年度 | 2001 |
要約 | トスポウイルスのヌクレオカプシドタンパク質および3’末端非翻訳領域の保存性の高い領域から考案した共通プライマーを用いたRT-PCR法により日本で発生が確認されている5種のトスポウイルスを検出することが出来る。 |
キーワード | ディジェネレートプライマー、トスポウイルス、RT-PCR |
背景・ねらい | トスポウイルスは作物にえそ輪紋や壊死斑点を起こし、商品価値を著しく低下させるウイルスである。近年、日本未報告のトスポウイルスによる病害の発生が次々と確認されている。既知のトスポウイルスの同定には抗体を用いたエライザ法や特異的プライマーを用いたRT-PCRによる検出が利用されているが、これらの方法は検出できるウイルスが限られており、未知のウイルス種に対しては有効でない。そこで、遺伝子データベースに登録されているトスポウイルスの遺伝子情報から見出した共通領域を基に複数のトスポウイルスに適応可能なプライマーを考案した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 遺伝子データベースに登録されている9種のトスポウイルスのヌクレオカプシドタンパク質のアミノ酸配列から考案した共通性の高いプライマーTsMCR2 [5' TCIRDICKIYKRAAIGTCMSRTC 3'(混合塩基の表記は国際表記に従う。ただし、Iはイノシンを表す。)]を上流プライマーとして使用する。 2. トスポウイルスのS RNAの3’末端非翻訳領域の末端8塩基は共通することから、安定性を高めるため12個のグアニシン(G)を付加した配列(5' GGGGGGGGGGGGAGAGCAAT 3')を下流プライマーとして使用する。 3. 感染の疑われる植物からCF11ニトロセルロースを用いて抽出したRNAを鋳型として上記プライマーを用いて表1に示す手順にて反応させることで、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV)からは450bpの大きさのDNA断片が増幅され、メロン黄化えそウイルス(MYSV)およびスイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)、Iris yellow spot virus (IYSV; 和名未定)からは350bpの大きさのDNA断片が増幅される(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 作成されたプライマー対は理論上、日本未発生のトスポウイルスであるWatermelon bud necrosis virus、Peanut bud necrosis virus、Tomato chlorotic spot virusおよびGroundnut ring spot virus(いずれも和名未定)にも適用できる。 2. ディジェネレートプライマーを使用するため、通常のRT-PCR反応よりプライマーの最終濃度を高くする必要がある。 3. 図1の反応条件はPERKIN ELMER社のRNA PCR Kitを使用した場合であり、試薬により反応条件を最適化する必要がある。ウイルス種の同定には特異性の高いプライマーを用いたRT-PCRまたは特異的抗体を用いたエライザを別途に行う必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | インパチェンス データベース |