家畜スラリーの多量投与によるバイオマス蛋白代謝関連微生物相の変化

タイトル 家畜スラリーの多量投与によるバイオマス蛋白代謝関連微生物相の変化
担当機関 九沖農研
研究期間 1998~2003
研究担当者 渡邊克二
奥田充
新美洋
浅沼修一(国際農研)
早野恒一(静岡大学)
発行年度 2002
要約 家畜スラリーの継続的な過剰投入により、バイオマス蛋白代謝の初めの分解過程に関与するプロテアーゼ生産菌相や次の過程に関与する部分消化蛋白の利用菌の菌相がBacillus属細菌から多様な菌相に変化している。
背景・ねらい 家畜スラリーを多量投与し続けた圃場では窒素溶脱が顕著となっており、有機態窒素代謝活性が他の土壌と比べ顕著に増加している。ここでは家畜スラリーの過剰投与に伴う有機態窒素代謝に関与する土壌微生物相(プロテアーゼ生産菌、部分消化蛋白の利用菌)の変化を検討する。
成果の内容・特徴 1.
家畜スラリー投与1週間後にペプトン-ポリミキシン培地(PP培地)で増殖する部分消化蛋白のみを利用する菌数は、7.6倍に増加し、全細菌数と同レベルに達する。微生物数は相互に高い相関があり、さらに土壌のNH4+及びNO3-含量とも高い相関がある(表1)。
2.
部分消化蛋白を利用可能な菌のうち隣接圃場から分離された10株は全てLowGCグラム陽性グループに属するBacillus属細菌であるが、120t/ha投与区から分離された12株はLowGCグラム陽性グループとActinobacteriaグループの細菌であり、600t/ha投与区から分離された13株はLowGCグラム陽性グループ、Actinobacteriaグループ、プロテオバクテリアα、β、χサブグループである(表2)。
3.
隣接圃場から分離されたプロテアーゼ生産菌の95%(21株/22株)はLowGCグラム陽性グループに属するBacillus属細菌(21株中16株がB.megaterium/simplex)が優占しているが、このBacillus属細菌の割合は120t投与区および600t投与区では、それぞれ62%(18株/29株、18株中16株がB.megaterium/simplex)、55%(12株/22株、12株中が6株がB.megaterium/simplex)へと低下する(表2)。
4.
以上の結果から家畜スラリーを多量投与した土壌ではバイオマス蛋白の分解に初めに関わるプロテアーゼ生産菌や次の過程に関わると考えられる部分消化蛋白の利用菌の菌相がBacillus属細菌から他の細菌群へ変化している。
成果の活用面・留意点 1.
培養可能な菌についての結果である。
2.
本家畜スラリー投与飼料作畑土壌では土壌蛋白の分解活性が無投与土壌の数倍に増加し高く維持されている。
3.
部分消化蛋白の菌相は家畜スラリー投与前であるが、投与後も菌相の構成に変化はなく菌群構成が置換わっている。
4.
B.megaterium/simplexは細菌の中で1細胞の体積が最大で細胞内に多量の有機態窒素を蓄積することができる。またBacillus属細菌では胞子/栄養細胞の形態変化により、有機態窒素を菌体内に保持可能である。一方で非Bacillus属細菌が有機態窒素代謝の主体となった家畜スラリー投与区のような圃場では、土壌の有機態窒素の消耗が予想される。
図表1 222046-1.gif
図表2 222046-2.gif
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