フラボノイドによる炎症反応の抑制

タイトル フラボノイドによる炎症反応の抑制
担当機関 (独)食品総合研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 後藤真生
小堀真珠子
石川(高野)祐子
八巻幸二
発行年度 2001
要約 炎症抑制効果を持つ食品成分の探索を行ったところ、ナリンゲニンやゲニステインなどのフラボノイドにおいて、炎症時に観察されるプロスタグランジン産生や白血球接着分子発現を抑制することが確認された。
キーワード フラボノイド、炎症アレルギー反応、プロスタグランジン、E-selectin
背景・ねらい 近年、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー炎症性疾患は増加の一途をたどっている。そこで、これらの疾患の低減を目的として、炎症反応によって起こる白血球浸潤にかかわる接着分子発現およびプロスタグランジン(PG)産生の2つを指標に、炎症抑制効果のある物質を探索した。
成果の内容・特徴
  1.  白血球接着分子(E-selectin)発現抑制効果の検討
    ヒトさい帯静脈内皮細胞に果実抽出物やフラボノイドを試料として添加した後、腫瘍致死因子(TNF-α)による刺激誘導を行いCell-ELISA法によりE-selectinの発現量を測定した。
    約30種のフラボノイドを試料として供試したところ、図1のようにアピゲニンやゲニステインなどで発現抑制活性が確認された。しかし、これらの配糖体では抑制活性は認められなかった。
  2.  PG産生抑制効果の検討
    ラットの炎症性腹腔マクロファージを調製し、試料を添加した後に、大腸菌リポポリサッカライドによる刺激誘導を行い、培養上清に遊離したPGE2の産生量をELISA法で測定した。
    その結果、図2に示したように、ゲニステイン、ナリンゲニンなどの数種のフラボノイドにPGE2産生抑制活性が認められた。しかし、前項同様に、それらの配糖体には活性が認められなかった。また、アラキドン酸代謝におけるキー酵素である、脂肪酸シクロオキシゲナーゼの発現量をWestern
    blot法を用いて測定したところ、ナリンゲニンなどの一部のフラボノイドでは脂肪酸シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現を抑制していることが明らかになった。フラボノイドによるPG産生抑制効果は、脂肪酸シクロオキシゲナーゼの発現及び活性抑制によるものと考えられた。

成果の活用面・留意点 本研究により、フラボノイドによる接着分子発現やPGE2産生抑制効果が確認された。しかし、この成果はヒト並びラットの細胞レベルにおける効果であるため、動物実験等を通じて、実際の炎症抑制効果を確認する必要がある。
図表1 224535-1.gif
図表2 224535-2.gif
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