| タイトル |
高粘度溶液中の細菌の運動 |
| 担当機関 |
(独)食品総合研究所 |
| 研究期間 |
1999~2001 |
| 研究担当者 |
曲山幸生
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| 発行年度 |
2001 |
| 要約 |
高分子を含む溶液中では粘度が高くなっても細菌の遊泳速度が必ずしも小さくならないという奇妙な現象が知られている。これは高分子が形成する動的なネットワークと細菌べん毛のサイズが近いために起こり、微視的環境に特有な現象であると考えられる。
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| 背景・ねらい |
生体機能は、微視的空間で多数の要素が複雑に相互作用した結果、最終的に目に見える形で現れてくる。真に生体機能を理解し利用するためには、対象物の大きさや時間スケールにあった法則を適用しなければならない。 本課題では、高分子溶液中で高粘度になるほど細菌運動速度が上昇するという、未解明の現象(図1)を取り上げた。従来は、溶液に加えられた高分子によって等方的に溶液粘度が増加すると考えられてきたが、この現象は説明できなかった(図1)。担当者は、高分子溶液中では細菌べん毛のような微小棒状物体が横方向にだけ運動しにくくなるという仮説を提案している。本課題の目的は、理論を発展させ、実験的にその検証をおこなうことである。
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| 成果の内容・特徴 |
- 理論に関して
- 溶液中の高分子は動的なネットワークを形成していること(高分子物理学におけるレプテーションモデル)を考慮し、物体のごく近傍には高分子が存在しない空間(仮想空間)を仮定することができる(図2)。仮想空間内の運動と仮想空間の外に出る運動を区別し、それぞれに異なる見かけの粘度を対応させることにより、細菌運動の異常現象を説明することができた(図1)。形式上は従来の抵抗力理論を修正することにより、結果を求めることができた。
- 次の課題として、見かけの粘度をどのようにして決定すればよいのか(高分子の種類、分子量、溶液の種類の影響など)、スピロヘータなどのらせん形状細菌の運動への拡張を考える必要がある。
- 実験に関して
- 二方向照明暗視野顕微鏡法を考案した(図3)。
- 4分割光学フィルター(図4)を用いて、二方向照明暗視野顕微鏡法の試作測定システムを構築した。サンプルは、TMV束を用いた。原理的には二方向照明暗視野顕微鏡法が使えることがわかったが、実際にはより強く均一な照明が必要であり、実施は困難であると結論した。
- レーザー共焦点顕微鏡の適用を検討した結果、マルチピンホール型レーザー共焦点顕微鏡、冷却ICCDカメラ、細菌直べん毛の組合せが、現状では最善であると結論した。
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| 成果の活用面・留意点 |
本研究により多糖などの高分子を含む環境(例えば、バイオフィルムや粘液)中の微生物の運動を予測できる可能性が示された。さらに、自然界の一様でない環境における生物の挙動解明につなげていきたい。
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| 図表1 |
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| 図表2 |
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| カテゴリ |
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