農薬登録をした高圧炭酸ガスを用いたクリシギゾウムシ殺虫技術

タイトル 農薬登録をした高圧炭酸ガスを用いたクリシギゾウムシ殺虫技術
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2007~2008
研究担当者 宮ノ下明大
今村太郎
発行年度 2007
要約  クリの主要害虫であるクリシギゾウムシを、高圧炭酸ガスを用いて殺虫する。温度25℃、圧力3MPaの条件下で30分処理後、ガスを10分かけて放出するとクリシギゾウムシはほぼ完全に殺虫できる。
キーワード 臭化メチル代替技術、農薬登録、高圧炭酸ガス、クリシギゾウムシ
背景・ねらい
 臭化メチルは地球のオゾン層を破壊することから、モントリオール議定書締約国会合によってその生産が段階的に制限され、先進国では2005年に生産中止となった(途上国では2015年の予定)。現在、日本では植物検疫用あるいは国際的に不可欠用途使用申請がなされ許可された量のみが使用されている。特にクリシギゾウムシ防除の場合は、臭化メチル以外に有効な技術がないため、不可欠用途使用申請を行い2006年はクリ用として約7トンの使用が許可された。しかし、臭化メチルの不可欠用途使用の許可が今後も認められるかは不明であり、代替殺虫技術の開発が急務である。
成果の内容・特徴 1.クリ70kg(品種:筑波)を一度に処理できる大型高圧炭酸ガス処理装置を製作し(図1)、温度25℃、圧力3MPaの条件で30分処理後、内部の炭酸ガスを10分かけて放出するとクリシギゾウムシをほぼ完全に殺虫することができる(図2)。この殺虫率は従来の臭化メチルくん蒸の効果と同程度である。高圧炭酸ガス処理装置は、3MPaに耐える容器が必要であるが、装置の構造は簡単である。
2.複数年にわたり複数の地域からクリを採取し、同様の条件で殺虫試験を行ったところ、十分な殺虫効果が確認された。さらに寒冷地での効果をみるために、10℃の低温で処理したが殺虫効果は維持された(表1)。
3.本成果をもとに2007年7月、クリシギゾウムシ殺虫を目的としたくん蒸剤として、高圧炭酸ガス処理が農薬登録された(登録番号:18194号・農薬名:エキカ炭酸ガス)。現在、唯一の臭化メチル代替の農薬である。
4.1回の処理は約1時間であり、臭化メチルの2~3時間のくん蒸処理に比べると短時間である。

成果の活用面・留意点
1.クリ果実を処理する場合はガスを瞬時に放出するとクリが割れることから、10分程度かけてガスを徐々に放出することが重要である。
2.ドイツでは、高圧炭酸ガスによる大規模な殺虫装置(直径2m,長さ約20mの円筒形耐圧容器)が実用化され、薬用茶(ハーブティー)の殺虫に使われている。その処理条件は2MPaで2時間である。装置導入コストが高くとも、付加価値の高い素材で実用化されている。
3.高圧炭酸ガスは残留性がなく、農薬のポジティブリスト制度の対象外物質であり、有機JAS認定制度においても使用が認められている。
4.放出した炭酸ガスは回収し再利用するシステムを導入することで、環境に配慮したシステムとすることが可能である。
5.高圧炭酸ガス処理によるクリ成分への影響は認められない。
6.クリシギゾウムシの殺虫技術には、「温湯処理」や「冷蔵処理」が開発されているが、カビの発生や長い処理時間に問題がある。

図表1 224643-1.jpg
図表2 224643-2.gif
図表3 224643-3.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 くり コスト 植物検疫 農薬 品種 防除

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