タイトル |
LC/MS/MSを用いた麦類汚染かび毒の一斉分析 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
中川博之
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発行年度 |
2008 |
要約 |
高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC/MS/MS)を用いてフザリウム属産生かび毒の一斉分析法を検討した。代表的なフザリウム属産生かび毒であるデオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、T-2トキシン、ゼアラレノンなどを含む複数の麦汚染かび毒がppb(ng/ml)レベルで検出可能である。
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キーワード |
赤かび病、フザリウム属、かび毒、麦、LC/MS/MS、一斉分析
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背景・ねらい |
赤かび病は小麦、大麦などの穂に病原菌(一部のフザリウム属菌)が感染することで、粒が肥大しなくなったり、穂全体が枯れたりする麦類の最重要病害の一つである。温帯湿潤気候区域に属する我が国ではフザリウム属菌が小麦や大麦において深刻なかび毒汚染を引き起こすことがある。フザリウム属菌が麦において産生するかび毒はデオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、T-2トキシンなどのトリコテセン系かび毒やゼアラレノンなどが知られている。これらによる共汚染も報告されているが、実用的な同時検出法は開発されていないのが現状である。本研究では、高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析装置(LC/MS/MS)を用いてフザリウム属産生かび毒の一斉分析法を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 麦類を汚染する複数のフザリウム属産生かび毒(表1)について一斉分析を試みた。LC/MS/MS はLC部にAgilent 1100シリーズ(Agilent Technologies)、イオン化部にエレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブをもつ三連四重極型質量分析装置4000QTRAP LC/MS/MSシステム(Applied Biosystems)を使用した。LCの移動相は酢酸アンモニウムを添加した水-アセトニトリル混合液、分離カラムは逆相カラムを使用し、流速毎分0.20 ml、アセトニトリルグラジエント条件下でかび毒を溶出させた。
- 分析所要時間は1回あたり30分程度であり、いずれのかび毒についてもppb(ng/ml)レベルで検出可能であることを確認した(図1)。
- 本手法は検出に質量分析装置を使用しているため、表1に示すような構造や分子量が類似した化合物でも区別して検出することが可能である。また、分析対象化合物の誘導体化を必要としないことから、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)に比べて分析試料の適用範囲が広い。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は麦類を汚染するフザリウム属産生かび毒の分析に適用可能である。小麦におけるDONおよびNIVの定量分析に関しては、技能試験(平成20年度小麦のデオキシニバレノール検査に関する外部精度管理調査、財団法人食品薬品安全センター主催)に参加し、分析値の信頼性の保証(zスコア2以内)を受けている。
- DONおよびNIV以外のかび毒の分析に関しては、実際の汚染試料(麦類)からかび毒を抽出・回収する方法の確立が今後の課題である。しかし、DONおよびNIVはフザリウム属産生かび毒の中でもその汚染が最重要視されており、平成20年12月17日に汚染低減のための指針が農林水産省から発表されたばかりある。このような背景を踏まえ、本成果情報を報告した。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
大麦
小麦
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