フコキサンチンの体内動態

タイトル フコキサンチンの体内動態
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 長尾昭彦
発行年度 2008
要約  抗酸化性などの多様な機能性をもつフコキサンチンは、経口摂取によってマウスに吸収され、主としてフコキサンチノールとアマローシアキサンチンAへ代謝され、脂肪組織などの体内の各組織に蓄積される。
キーワード フコキサンチン、代謝産物、体内動態、褐藻
背景・ねらい
 フコキサンチンはワカメやコンブ等の褐藻類に含まれる主要なキサントフィルであり、アレン結合をもつ特異なカロテノイドである。抗酸化性、アポトーシス誘導活性、抗腫瘍作用、抗肥満作用等の多機能性を示すキサントフィル類として注目されている。フコキサンチン含有食品を生活習慣病予防のために安全に利用するためには、摂取後の体内での蓄積、代謝変換、消失動態について明らかにする必要がある。そこで、フコキサンチンを投与したラット及びマウス組織中での代謝産物の蓄積及び消失動態について明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. フコキサンチンを含有するワカメ粉末やワカメ抽出物を含む飼料でラットやマウスを飼育すると、各組織にはフコキサンチンは検出されないが、代謝産物であるフコキサンチノールとアマローシアキサンチンAの顕著な蓄積が見られる。
  2. ワカメ粉末を含む飼料で飼育したラットの後腹膜脂肪組織は、ワカメ粉末含量が高くなるとフコキサンチン代謝産物の蓄積量が増加し、組織が橙色を呈する(図1)。
  3. 脂肪組織では他の組織に比べフコキサンチノールよりアマローシアキサンチンAを蓄積しやすい。
  4. 濃度は低いが他に3種類の代謝産物がマウス血漿に検出され、そのひとつは炭素鎖長の短いパラセントロンと同定された(図2)。ほ乳類において、キサントフィルが活発に代謝されることが示唆される。
  5. 同定されたこれらのフコキサンチン代謝産物は生物活性に関与すると考えられるアレン結合を保持している。
  6. ラットでのフコキサンチン代謝産物蓄積量はマウスに比べ約70分の1と著しく少なく、種によって腸管吸収及び体内動態が異なることが示唆される。
  7. マウス血漿ではフコキサンチノールとアマローシアキサンチンAの半減期は0.9日であり、脂肪組織ではそれぞれ2.8日と5.4日である(図3)。非極性のカロテン類に比べ速やかに代謝されるものと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. フコキサンチンは体内に検出されないことからフコキサンチンの機能性は代謝産物が担っているものと考えられる。
  2. 動物種によってフコキサンチンの吸収や代謝産物の蓄積がかなり異なることが示唆されることから、ヒトへの類推には注意が必要である。

図表1 224670-1.jpg
図表2 224670-2.gif
図表3 224670-3.gif
カテゴリ あま 機能性

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