タイトル |
草地におけるフン虫の牛糞埋め込み活動の効果 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1995~1996 |
研究担当者 |
吉田信代
山下伸夫
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発行年度 |
1996 |
要約 |
フン虫(Digitonthophagus gazella :アフリカ原産)による牛糞埋め込み活動は、牛糞の分解、土壌への還元を促進し、牧草の収量を増大させる。また、本種は牛糞が地上に長期間残ることによってできる不食過繁地を、より早く可食地へと回復させる。
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背景・ねらい |
草地の生産性を高めるためには、放牧牛が排泄した糞をなるべく早く分解・還元し、牧草の栄養源とする事が重要である。ここでは、フン虫(D. gazella)の牛糞埋め込み活動が牛糞の分解、土壌への還元を促進し、ひいては牧草の生育にプラスの効果を及ぼすかを評価する。また、本種の牛糞埋め込み活動が、不食過繁地をより早く可食地へと回復させる効果について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 牛糞中の物質が分解・還元され、牧草へと移行する過程で、フン虫(D. gazella)の埋め込み活動がどの程度物質の流れを促進するかを調べるため、牛糞にマーカーとして塩化ルビジウムを添加し、フン虫に埋め込みを行わせた区と、行わせない区(表1)でオーチャードグラスに吸収されるルビジウム濃度を比較した。6カ月後のオーチャードグラスの葉と茎のルビジウム濃度は、フン虫に牛糞を埋め込ませた区の方が、フン虫を放さずに牛糞が地上に残ったままの区より2倍以上高くなっており、フン虫の埋め込み活動によって牛糞中の物質がより多くオーチャードグラスへ移行することが示された(図1)。
- フン虫(D. gazella)が牛糞を埋め込んだ場合(B区)は、フン虫を放さなかった場合(A, C区)よりもオーチャードグラスの収量が多くなった(表1)。また、フン虫の埋め込み活動がないと、牛糞を地上に置いても(A区)、置かないとき(C区)と同程度の収量しか得られなかった。
- 草地に牛糞を設置してから90日目以降の不食過繁地の面積は、D. gazellaを放飼した区では、在来のフン虫(Onthophagus lenzii)を放した区や、フン虫の侵入を阻止した区より小さくなっており、草地の回復が早まった(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- D. gazellaはおもに熱帯から亜熱帯に分布している種であるため、越冬が可能な西南暖地以南に放飼し、定着させて利用することが望ましい(分布可能条件:最寒月の平均気温、4~8℃以上)。寒冷地では、夏期に限って大量放飼すれば利用できる可能性がある。また、放飼の際には、在来フン虫に対する影響を考慮する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
亜熱帯
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