農用地の持つ国土保全機能評価と農業地域類型区分との関係

タイトル 農用地の持つ国土保全機能評価と農業地域類型区分との関係
担当機関 農業環境技術研究所
研究期間 1994~1997
研究担当者
発行年度 1997
要約  国土数値情報の3次メッシュを評価単位として「国土資源」プロジェクト研究等で開発された評価手法をもとに,全国の農用地を対象に4種類の国土保全機能を評価し,パーソナルコンピュータ用データベースを作成するとともに,その分布概要を農業地域類型区分との関係において明らかにした。
背景・ねらい  日本は自然立地的に災害が多いという特徴を持っている。伝統的な日本の農業はこのような自然特性を巧みに利用して,農業生産をしながら,都市を含めた周辺地域の環境を保全してきた。しかし,最近の中山間地域における農業人口の高齢化,過疎化および近郊農村における無秩序な混住化は農村や農用地の持つ国土保全機能を弱めつつある。農用地がもつ各種の国土保全機能は目に見えず面的広がりをもっているため捉えにくいが,これを物理量として評価する手法を開発し,地域環境管理計画等の各種環境行政施策立案に役立つ「農用地が持つ国土保全機能評価データベース」の作成を行うとともに,その分布特性の概要を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 水田,畑地,果樹園等農用地面積がメッシュ内総面積の50%以上を占める日本全国の農用地メッシュ(メッシュの大きさは約1km×1km,約54,000メッシュ)を評価対象とし,土壌侵食防止,土砂崩壊防止,水かん養,大気浄化(NO2ガスの吸収量,吸収ポテンシャル量)の4機能について,パソコンで利用可能なメッシュデータベースを作成した。
  2. このデータベースは現在の土地利用条件下及び仮に農用地を放棄して荒れ地化した時の評価値と両者の差(ギャップ)の3種類の値が算定されている。また,このデータベースはメッシュ単位,市区町村単位,地方単位でとりまとめられており,市区町村単位,地方単位のものは農業地域区分との関係解析を行うことが出来る。
  3. 現況の土壌侵食量は全国平均で4.2t/ha/yrであるが,耕作放棄すると14.8t/ha/yrとなり,限界許容量である10t/ha/yrを大きく越えてしまう。特に中山間地域では耕作放棄することにより,その他の地域の土壌侵食量の約2.5倍の21.6t/ha/yrとなり急速に土壌が荒廃することが予測された。地方別では四国や九州の放棄後の危険度が極めて高い(図1)。
  4. 農用地の土砂崩壊危険度ランク評価値(10点満点法)は全国平均でみると現況土地利用では4.5点,農用地放棄後では6.9点と比較的低いが,中山間地域では耕作放棄することにより6.0点から8.1点に上がり危険度が更に高まる(図2)。
  5. 水かん養機能を評価するギャップ値(現況評価値-放棄後評価値)は東北,中国,四国,中部などの地方で高い。東北では扇状地地域の農地の水かん養機能が高い(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. データベースを公開するので国や地方自治体等などで,それぞれの地域における農用地の持つ国土保全機能からみた重要度が評価できるため各種の環境計画や農業計画の基礎資料として利用できる。
  2. 土壌侵食防止機能と大気浄化機能は絶対量(t/ha/yr)による評価であるが,土砂崩壊防止機能,水かん養機能については指数による相対評価である。
  3. 「国土資源プロジェクト研究」等で開発された保全機能の評価手法の詳細については発表論文1) を参照されたい。
図表1 225227-1.jpg
図表2 225227-2.jpg
図表3 225227-3.jpg
カテゴリ 水田 中山間地域 データベース

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