湿性植生による土壌懸濁物質の捕捉機能の評価

タイトル 湿性植生による土壌懸濁物質の捕捉機能の評価
担当機関 地球環境部
研究期間 2000~2002
研究担当者 伊藤一幸(東北農業研究センター)
原田直國
西村誠一
池田浩明
発行年度 2002
要約 代かき水とともに水田から流出した土壌懸濁物質は,水田周辺の湿性植生への通水により46~98%が捕捉され,この捕捉機能は植生量の豊富な湿地ほど高い。よく捕捉される懸濁物質は,粒径が30 μm以下の土壌粒子である。
背景・ねらい 代かき水に含まれる土壌懸濁物質は,農業用排水路を通じて河川等へ流出する。土壌粒子には残留性有機汚染物質等の有害化学物質が吸着しやすいため,汚染された土壌懸濁物質が水田から流出した場合,水生生物等への悪影響が懸念される。この影響を防止するためには,水田からの土壌懸濁物質の流出を抑止することが有効な手段のひとつとなる。これに対して,湿性植生は水質を浄化することが知られているが,代かき水に含まれる土壌懸濁物質の捕捉機能については定量化されていない。そこで,隣接水田の代かき水が流入している湿地を対象として,異なる植生が成立している地点を選び,代かき水の流入口および流出口の2地点において土壌懸濁物質の濃度と粒径組成を測定し,2地点間での減少率を算出して,湿性植生による土壌懸濁物質の捕捉機能を評価した。
成果の内容・特徴
  1. 茨城県つくば市周辺における11地点の湿地(休耕田・排水路)を対象として,2002年5月の代かき作業期に調査を実施した。その結果,隣接水田の代かき水に含まれる土壌懸濁物質は,46~98%(平均で72%)が湿性植生によって捕捉されることが示された(表1)。
  2. 土壌懸濁物質の捕捉率は,アシカキが目立つ湿地で低く,ガマまたはヨシが目立つ湿地で高かった(表1)。この捕捉率は,湿地の植生量(=植被率(%)×植生高(m)/200)が大きいほど増加し,植生量が0.4程度で飽和した(図1)。
  3. 代かき水に含まれる土壌懸濁物質は,粒径が10~30 μmのものが最も多く,湿性植生は粒径が30 μm以下の小さな土壌粒子をよく捕捉した(図2)。
  4. これらの結果から,湿性植生は代かき水に含まれる土壌懸濁物質を捕捉する機能を持ち,その機能は植生量が豊富な湿地で向上することが明らかとなった。
成果の活用面・留意点 水田の排水口付近にバイオマスの豊富な湿性植生を誘導・配置することにより,土壌懸濁物質を捕捉することが可能である。
図表1 225343-1.png
図表2 225343-2.png
図表3 225343-3.png
カテゴリ 水田

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