土壌を用いた他感作用の検定手法の開発

タイトル 土壌を用いた他感作用の検定手法の開発
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2000~2003
研究担当者 荒谷 博
藤井義晴
平舘俊太郎
発行年度 2003
要約 植物の根から土壌に放出された他感物質の活性を評価する生物検定法を開発した。空中振とう法で採取した根圏土壌に寒天を添加しそれに重層した寒天上に置床した検定植物の成育阻害状況から,現地土壌中で発現する植物の他感作用を検出できる。
背景・ねらい これまで,他感作用の3つの作用経路(根からの滲出,茎葉や残さからの溶脱,揮発性物質による揮散)に特異的な検定法として,それぞれプラントボックス法(農業環境研究成果情報第8集),サンドイッチ法(同,第14集),揮発性物質検定法(同,第16集)を開発してきた(表1)。しかし,植物の根から土壌に放出された物質が土壌中で示す活性を評価する手法がなかった。そこで,他感物質の濃度が最も高い根圏土壌を材料とし,土壌中における他感物質の活性を評価するための検定法(根圏土壌法)を開発する。なお,根圏土壌は「空中振とう法」(岡島ら, 1973)に準じる。すなわち,植物の根系を攪乱せずに採取し,手首を上下に軽く振ることによって落とした土壌を根域土壌,その後も根の表面に付着している土壌を刷毛等で拭き落としたものを根圏土壌とする。
成果の内容・特徴
  1. 本法は根から放出された他感物質の,土壌中での活性を検定する方法であり,具体的な検定の手順は次のとおりである:目の開き1mmの篩で根毛を除去した後の根圏土壌を,乾土換算で3.0g(4cm3相当)秤量し,内径 3.5cmの6穴マルチディッシュに入れ,0.75%の寒天5mlを添加する。固化した後,検定層として3.2mlの寒天を重層し,その上にレタス等の検定植物を置床する。暗黒下20~25℃の恒温装置中で3日間培養後,幼根長と下胚軸長を測定する(表1)。
  2. 土壌に水を添加した培地および土壌に寒天を添加した培地を用いて,検定用植物の成育を比較した結果,前者の培地では検定植物の成育は不良である。しかし,後者では十分な成育が確保されるため,検定植物の成育差を測定しやすい。このように,土壌に寒天を添加した培地を用いることにより,土壌中に含まれる他感物質の影響を容易に検出できる(図1)。
  3. 本法を用いていろいろな植物の活性を測定した結果,他感作用の報告があるヘアリーベッチや,大 型侵入植物であるクワモドキの根圏土壌から,強い阻害作用が検出される(表2)。
  4. 土壌が存在しない条件下で根から放出される物質の阻害作用を検定するプラントボックス法と本法とを比較すると,同一植物でも後者で強い阻害活性が検出されることが多い(表2)。両手法ともに高い活性が検出される植物は,土壌を介しても他感作用を発現することが示唆される。このことから,現場における植物の他感作用の発現を評価するために,本法は有効と考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法(根圏土壌法)は他感作用を検定する他の手法とともに,遺伝子組換え農作物の生物多様性影響評価にかかわる調査手法のひとつとして使用される(農林水産大臣がその生産又は流通を所管する遺伝子組換え生物等に係わる第一種使用規程の承認の申請について;施行文書,平成16年2月9日)。
図表1 225369-1.png
図表2 225369-2.png
図表3 225369-3.png
カテゴリ 栽培技術 生物検定法 レタス

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