タイトル |
亀裂の発達した粘土質転換畑の暗渠からのリンの流出 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
加藤英孝
関口哲生(中央農研)
吉田修一郎(中央農研)
江口定夫
足立一日出(中央農研)
中野恵子
鈴木克拓
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発行年度 |
2004 |
要約 |
下層土に亀裂の発達した粘土質転換畑の暗渠からのリンの流出は,降雨により作土と耕盤層の境界の土壌水の圧力ポテンシャルが正になると始まる。暗渠から流出するリンの大部分は懸濁態であり,暗渠を通じた流出が圃場からのリンの主要な流出経路になりうる。
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背景・ねらい |
リンは溶解度が低く土壌粒子に強く収着されるため,土層内を下方移動しにくいと考えられてきた。しかし,下層土に亀裂の発達した圃場では,土壌粒子に吸着されたリンが懸濁態として下方移動し,暗渠へ流出する可能性がある。そこで,下層土に亀裂を有する粘土質転換畑(新潟県内,細粒質斑鉄型グライ低地土,畑転換9年目,大豆作付け,施肥量 12 kg-P ha-1)において,降雨時の土壌水分状態,暗渠および表面流出水量,流出水中の懸濁態(>0.1 μm画分)・溶存態リン濃度を測定し,リンの暗渠流出の発生条件,流出濃度・流出量および主要な流出形態を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 暗渠からの水の流出は,降雨により作土と耕盤層の境界面(深さ20 cm)の土壌水の圧力ポテンシャルが上昇し,正になると始まる。暗渠流出流量が降雨強度の変化に迅速に応答し,下層土の水分含量には変化が見られないことから,暗渠流出水のほとんどは下層土の亀裂を通じたバイパス流によるものと考えられる(図1)。
- 暗渠流出水中のリン濃度は,暗渠流出開始直後の流量が大きいときに高く,流量が低下するにつれて徐々に減少する傾向がある。表面流出水中のリン濃度の変化も暗渠流出水と同様の傾向を示すが,暗渠流出水中の濃度より概して低い(図2)。
- 暗渠流出水中のリン濃度は,最高1.3 mg-P L-1に達しうる。リン濃度が0.2 mg-P L-1を超える暗渠流出水では,リンの80%以上が懸濁態として存在する。(図3)。
- 調査圃場では,2004年の作付け期間を通じたリンの暗渠流出量0.57 kg-P ha-1(施肥量の約5%)の約9割(0.51 kg-P ha-1)が懸濁態と推定される。これはリンの表面流出量0.27 kg-P ha-1(施肥量の約2%,うち懸濁態は0.21 kg-P ha-1)を大きく上回る。亀裂の発達した粘土質転換畑では,懸濁態での暗渠流出がリンの主要な流出経路となりうる(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 土壌条件の類似した転換畑からのリンおよび懸濁物質の流出量の予測に活用できる。
- 中粗粒質の土壌のように土壌マトリクス部分の透水性が高い転換畑では,懸濁態での暗渠流出がリンの主要な流出経路にならないことがある。
- 本試験におけるリン酸施肥量は当該地域における標準施肥量の約1/3である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
施肥
大豆
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