ユキヤナギに含まれる高活性植物生育阻害物質の発見

タイトル ユキヤナギに含まれる高活性植物生育阻害物質の発見
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 原田二郎(福井県立大)
荒谷 博
森田沙綾香(福井県立大)
杉江 元
藤井義晴
平舘俊太郎
発行年度 2004
要約 バラ科植物のユキヤナギは高活性の植物生育阻害物質であるシス-ケイ皮酸グルコシドを含んでいることを発見した。その活性は,天然の植物生育阻害物質としては最も強い部類に属する。また,活性本体はグルコースが脱離したシス-ケイ皮酸である。
背景・ねらい 生物由来の植物生育阻害物質は,環境中で速やかに代謝・失活されやすいことから,合成除草剤の代替資材として期待されている。多種類の植物を対象とした植物生育阻害活性の検索結果から,ユキヤナギ(バラ科シモツケ属の灌木で生垣や観賞用として広く普及している)の成葉から強い植物生育阻害物質を見出した。そこで,ユキヤナギに含まれる植物生育阻害物質を分離・精製して,その化学構造,植物生育阻害活性,および活性本体を明らかにし,天然植物生育阻害物質を活用するための基礎的知見とする。
成果の内容・特徴
  1. ユキヤナギの成葉をメタノールで抽出し,レタス幼根の伸長生長に対する阻害活性を指標として分離・精製を行い,抽出物から2種類の生育阻害物質を得た。核磁気共鳴および質量分析の結果,これらは1-O-cis-cinnamoyl-β-D-glucopyranose (図1,cis-CG) および6-O-(4'-hydroxy-2'-methylenebutyroyl)-1-O-cis-cinnamoyl-β-D-glucopyranose (図1,cis-BCG)であり,いずれもシス-ケイ皮酸グルコシドに属する新規物質である。
  2. レタス幼根の伸長生長に対する阻害活性は,cis-CGとcis-BCGで同程度である(図2)。両物質の活性は,市販の合成除草剤である2,4-Dよりも10~20倍弱いものの,自然界で最も阻害活性が強いアブシジン酸(cis-ABA)より2~4倍強い(図2A)。
  3. cis-CGとcis-BCGは,レタス以外にも,アオゲイトウ,アカクローバ,チモシー,ハクサイなどの様々な植物に対しても,強い生育阻害活性を示す。
  4. cis-CGとcis-BCGの植物生育阻害活性を2種類のケイ皮酸の異性体(シス体とトランス体)と比較すると,シス-ケイ皮酸(cis-CA)とは同等である(図2B)。しかし,トランス-ケイ皮酸(trans-CA)になると著しく活性が弱まる(図2B)。これらのことから,cis-CGとcis-BCGの活性本体は両物質の化学構造の一部を成すシス-ケイ皮酸であり,それがトランス体に変わると活性は激減する。
成果の活用面・留意点
  1. シス-ケイ皮酸は市販されていないが,市販のトランス-ケイ皮酸をエタノールなどの溶媒に溶解後,一晩程度紫外線照射(254 nm)することによって,シス-ケイ皮酸を容易に得ることができる(シス:トランス比は1:3程度)。
  2. シス-ケイ皮酸グルコシドとシス-ケイ皮酸の圃場における除草効果およびそれらの農業用資材としての実用性について解明する必要がある。
図表1 225411-1.png
図表2 225411-2.png
カテゴリ 病害虫 除草 除草剤 はくさい ばら レタス

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