日本在来の被覆植物リュウノヒゲの他感作用と他感物質としてのサリチル酸の発見

タイトル 日本在来の被覆植物リュウノヒゲの他感作用と他感物質としてのサリチル酸の発見
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 Zahida Iqbal(JST)
古林章弘(JST)
荒谷博
藤井義晴
平舘俊太郎
発行年度 2004
要約 日本在来の被覆植物リュウノヒゲの他感作用は,外来植物に比べて強く,土地表面を被覆すると雑草抑制効果が高い。植物生育阻害物質として,リュウノヒゲからβ-シトステロール,p-ヒドロキシ安息香酸,サリチル酸が同定され,含有量と比活性から,サリチル酸の寄与が大きい。
背景・ねらい 雑草抑制作用の大きい被覆植物を活用すれば,省力的な植生管理が可能となる。しかし,特定外来生物被害防止法の施行に伴い,外来植物の取り扱いには十分な配慮が不可欠となる。そこで,実用可能な被覆植物20種のうち,日本在来の植物に着目し,それらの雑草抑制作用を外来の被覆植物と比較するとともに,有望な在来の被覆植物の実用性について評価する。
成果の内容・特徴
  1. 葉から出る物質による作用を検定するサンドイッチ法と,根から出る物質による作用を検定するプラントボックス法により,多年生の被覆植物20種の他感作用活性を検定した(表1)。その結果,在来植物で阻害活性の強いものは,リュウノヒゲ,キチジョウソウ,コグマザサであり,外来植物で活性の強いのはマツバギク,ベニシタン,ムカデシバ,ギンロバイ等である。
  2. 表1から,他感作用に生育速度・被覆力を考慮して,実用的な7種(評価の項に***で表示したもの)を選抜し,現地での雑草発生を調査した。リュウノヒゲは,一年目は生育が緩慢なため,雑草抑制効果が顕著ではないが,土地表面を完全に被覆する2年目以降,雑草発生量はギンロバイ,キチジョウソウと並んで最も少ないが,リュウノヒゲ区の多様度指数はシバザクラ,ムカデシバに次いで大きい(図1)。リュウノヒゲは日本在来の植物であり,他感作用と現場での雑草抑制能が高い。
  3. リュウノヒゲに含まれる他感物質として,β-シトステロールとその誘導体,p-ヒドロキシ安息香酸およびサリチル酸を同定した(図2)。それぞれの化合物は,EC50 が120, 43, 18μmol/Lであり,生葉1g中に0.02, 0.65, 1.44μmol含まれる(サリチル酸含有率は,乾重当たり0.1~0.2%)。これらのことから,他感作用としての全活性(含有量/比活性)はサリチル酸が他よりも高く,他感物質として最も寄与していると推定される。
  4. サリチル酸はシモツケ等バラ科植物等に含まれる二次代謝物質で強い植物生理活性を持つが,リュウノヒゲに多量に含まれることが明かにされたのはこれが初めてである。
成果の活用面・留意点
  1. リュウノヒゲは,日本各地に様々な品種があり,アレロパシー活性の品種間差を調べる必要がある。
  2. リュウノヒゲの根は,麦門冬(バクモンドウ)という名で,国産生薬として利用されている。今回見出したサリチル酸は,解熱鎮痛薬として知られており,薬理効果の一部を説明出来る可能性がある。
図表1 225412-1.png
図表2 225412-2.png
図表3 225412-3.png
カテゴリ 病害虫 雑草 植生管理 植物生理 ばら 品種

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