タイトル |
外来植物ニセアカシアのアレロパシー活性と作用物質 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
Habib Nasir(アイベックス)
Zahida Iqbal(JST)
荒谷博
藤井義晴
平舘俊太郎
|
発行年度 |
2004 |
要約 |
在来および外来植物,各28種のアレロパシー活性をサンドイッチ法で検定したところ,外来植物ニセアカシアの活性が強い。その作用物質はカテコール構造を持つフラボノイド類であり,とくに(-)-カテキンとロビネチンの寄与率が高い。
|
背景・ねらい |
近年,農地周辺や河川敷にニセアカシア,オオブタクサ,シナダレスズメガヤなどの外来植物が侵入・繁茂し,景観を損ねるばかりでなく,生物多様性にも悪影響を与えている。そこで,これらの外来植物種の蔓延要因の一端を解明するために,農地周辺に生育する在来および外来植物のアレロパシー活性を比較検定するとともに,作用が強い外来植物についてはその作用物質を解明する。
|
成果の内容・特徴 |
- 葉から出る物質による作用を検定するサンドイッチ法によって,多摩川の河川敷に生育する56種(外来植物28種,在来植物28種)のアレロパシー活性を検定し,外来植物種群と在来植物種群について比較した(表1)。両植物種群ともに,活性の強いものと弱いものが混在していた。
- 侵略性が強い外来種でアレロパシー活性の高かったものは,セイタカアワダチソウ(他感物質としてシスデヒドロマトリカリアエステルを産生することが知られている),ニセアカシアであった。しかし,侵略性が強いアレチウリ,オオブタクサの活性はやや低く,シナダレスズメガヤ(ウイーピングラブグラス)は活性が低かった。オオニシキソウ,カタバエノコロはアレロパシー活性が強いが小型の植物で現状では侵略性は高くない。
- ニセアカシアに含まれる植物生育阻害物質の単離を試み,ロビネチン(robinetin),ミリセチン(myricetin),ケルセチン(quercetin),および(-)-カテキン((-)-catechin)を同定した(図1)。それぞれ,ニセアカシアの生葉1g当たり1.0, 0.6, 0.09, 1.3μmol含まれ,EC50(生育を50%阻害する濃度)はレタスに対しそれぞれ,330, 330, 360, 270μmol/Lなので,(-)-カテキンとロビネチンの寄与が高いと推定される。カテキンはニセアカシアが生育する河川敷の根圏土壌からも検出され,濃度は根圏の生土壌1kg当たり10mg程度である。
|
成果の活用面・留意点 |
- (-)-カテキンは,ヨーロッパから北米に侵入したキク科植物Centaureaの他感物質として最近報告があり(Science, 301:1377, 2003),この侵入植物の繁茂する原因として,北米の在来植物はこの物質に抵抗性がないためであると説明されている。
- 米国では,(-)-カテキンの活性が天然物として強力なので,天然の除草剤として開発しようと提案されている。ただし,植物による感受性の違いが大きい。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
病害虫
きく
除草剤
抵抗性
マトリカリア
レタス
|