水稲作付地を衛星搭載レーダと地理情報を用いて確実に精度良く検出する技術

タイトル 水稲作付地を衛星搭載レーダと地理情報を用いて確実に精度良く検出する技術
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 斎藤元也(東北大学)
石塚直樹(JST)
大野宏之
発行年度 2004
要約 田植期と水稲生長期の衛星搭載レーダ(SAR)画像から水稲作付地を抽出し,さらに,非水田域を示す地理情報を重ねてSARによる誤抽出を取り除く。この技術では,天候によらず結果が得られ,「調整水田」を除外できる。作付面積計測に応用すると,従来の統計的手法と同等な結果が省力的に得られる。
背景・ねらい 日本では,標本調査によって水稲作付面積が求められており,リモートセンシングを用いて省力化・迅速化することが期待されている。当所では,2時期の光学センサー画像と田植期のSAR画像を用いて,作付面積を精度良く推定する手法が開発されている(小川ら,1998)。その後,我が国では「調整水田」(雑草対策に湛水のみを実施する減反形態)が増加し,2003年現在,全水田面積の約7%を占める。そこで,調整水田を正しく判別して精度を一層高め,さらに,光学センサーを使用することによる観測の不確実さを解消した水稲作付地の検出技術の開発をめざす。
成果の内容・特徴
  1. SARは衛星からマイクロ波を斜め下方に照射し,それが衛星に戻る(後方散乱)強さを観測する。マイクロ波は雲を透過するため,天候にかかわらず地表面を観測できる。田植期の水田では,マイクロ波は水面で鏡面反射し,後方散乱が小さいため黒く映しだされる。一方,水稲生長期の水田では,マイクロ波は稲で様々な方向に反射し,後方散乱が増加するため白く映しだされる(図1上段)。
  2. これらのことから,田植期と水稲生長期の2時期のSAR画像を重ね合わせることで,天候によらず確実に水稲作付地を検出できる。また,この解析により「調整水田」を除外することができ,作付地をより正確に求めることができる(図1下段)。
  3. しかし,SARの原理的特性から,この手法は傾斜地において誤検出をおこしやすい。これを補正するために,水稲が作付けされる可能性がほとんどない非水田地域を示す地理情報を作成し,衛星より抽出した水稲作付地に重ね合わせる(図2)。この地理情報は,「数値地図25,000 (地図画像)」の水田記号をもとに作成する。「数値地図25,000 (地図画像)」は全国を網羅しているため,この地理情報は全国にわたって均質に作成することができる。
  4. 2000年7月2日と2000年7月27日の2時期のRADARSAT搭載SARデータ(Cバンド:波長約6cm,スタンダードモード:地上解像度12.5m)を用いて佐賀平野の26市町村の水稲作付地を検出し,これから作付面積を算出した結果,その精度は現行の統計的手法で得た値と比較して総面積比で102.1%,平均二乗誤差では85haであり,統計的手法と同等の精度である(図3)。2001年においても総面積比101.5%,平均二乗誤差54haと精度は高く,再現性が高い。
成果の活用面・留意点 Cバンドのマイクロ波を用いるSARでは,移植後約1ヶ月で水面を検出できなくなるため,2毛作地帯など移植日が分散する地域においては,湛水状態の水田を検出するために複数時期の衛星画像が必要となる場合がある。
図表1 225422-1.png
図表2 225422-2.png
図表3 225422-3.png
カテゴリ 病害虫 傾斜地 雑草 省力化 水田 水稲 リモートセンシング

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