浮遊シダ植物のサンショウモはスルホニルウレア系除草剤に対して感受性が高い

タイトル 浮遊シダ植物のサンショウモはスルホニルウレア系除草剤に対して感受性が高い
担当機関 [分類]
研究期間 2002~2007
研究担当者 池田浩明
発行年度 2005
要約 浮遊シダ植物のサンショウモは絶滅危惧種であり,主要な水田除草剤のスルホニルウレア系除草剤(ベンスルフロンメチルなど)に対して高い感受性を示す。その感受性は,OECDの推奨試験法が定めた試験植物種である緑藻のセレナストルムより著しく高い。
背景・ねらい 平成15年に農薬取締法が改正され,農薬の登録に際して,水産動植物への影響を評価することが義務づけられた。その評価法はOECDの推奨試験法に準拠しており,試験植物はセレナストルム(Pseudokirchneriella subcapitata)を主とする緑藻類を用いることになっている。しかし,緑藻類が水生植物界の農薬感受性を代表しているという科学的根拠は乏しい。一方,わが国のレッドデータブック(環境庁 2000)には,水田周辺に分布する絶滅危惧植物のうち9種において農薬汚染が減少要因の候補であると記載されている。そこで,水田で使用される主要な農薬としてスルホニルウレア系除草剤(SU剤)を対象とし,絶滅危惧植物に対するSU剤の急性毒性を明らかにして,それらの急性毒性をセレナストルム(文献値:Ishihara (2005))と比較することで,セレナストルムのSU剤感受性の代表性を評価する。
成果の内容・特徴
  1. 絶滅危惧植物のサンショウモ(図1),オオアカウキクサ,デンジソウ,スブタと普通植物のウキクサ,コウキクサを用いて,室内水耕試験と屋外土耕試験を行い,主要なSU剤であるベンスルフロンメチル(BSM)の急性毒性を明らかにする(表1)。
  2. BSMの急性毒性は,暴露濃度が減衰する土耕試験に比べて,暴露濃度が一定である水耕試験の方が概して高い(表1)。
  3. 試験植物のうち,浮遊シダ植物のサンショウモが,水耕と土耕,どちらの暴露試験においても最も高いBSM感受性を示している(表1)。このサンショウモのBSM感受性は,緑藻のセレナストルムより著しく高く,セレナストルムではサンショウモのBSM感受性を代表できないことを示唆する。
  4. 他のSU剤であるピラゾスルフロンエチル,イマゾスルフロンについて,サンショウモを用いた屋外土耕試験を行った結果,2剤ともBSMと同等な毒性を持っている(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 河川でのSU剤濃度は,最高値を示した後に減衰する。したがって,SU剤の生態影響を評価するためには,暴露濃度が減衰する土耕試験を活用することが望ましい。
  2. サンショウモのBSM感受性は,在来藍藻のメリスモペディア(Merismopedia tenuissima)と同等であり(Ishihara 2005),メリスモペディアを用いれば浮遊シダ植物の高いBSM感受性を代表できる。
  3. 単子葉植物におけるBSM感受性は普通種(ウキクサ,コウキクサ)の方が絶滅危惧種(スブタ)より高いことから,SU剤に対する高感受性は絶滅危惧水生植物に特有な形質とはいえない。
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図表1 225437-1.jpg
カテゴリ 病害虫 さんしょう 除草剤 水田 なす 農薬 評価法

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