13量体Alは根圏環境中で不安定なため生育阻害要因となりえない

タイトル 13量体Alは根圏環境中で不安定なため生育阻害要因となりえない
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2003~2005
研究担当者 平舘俊太郎
山口紀子
発行年度 2005
要約 13量体Alは強い植物生育阻害作用を持っているが、根圏環境中では共存する低分子有機酸や腐植酸のために不安定となる。このため、自然界で13量体Alが植物の生育を阻害する条件はほとんど成立しない。
キーワード 13量体Al、強い植物生育阻害作用、根圏環境、低分子有機酸、腐植酸
背景・ねらい 土壌pHが4~5の酸性土壌においては、土壌から溶出するAlが主な植物の生育を阻害する因子となっている。しかし、Alはさまざまな化学形態で存在することができ、植物生育阻害因子となっているAlの化学形態については諸説がある。13量体Alは、モノマーAlイオン(Al3+、Al(OH)2+、Al(OH)2+など)と水酸化物イオン(OH)の反応から生成されるポリマーAlイオンであり、[AlO4Al12(OH)24(H2O)12]7+の構造を持つ(図1)。13量体Alは、純粋な実験系では容易に生成され、かつモノマーAlイオンよりも強い植物生育阻害活性を示すことから、酸性土壌における植物生育阻害の主要因とする説が提案されている。そこで、13量体Alの特異的検出法を確立し、13量体Alが酸性土壌中で植物の生育阻害因子となっているか否かを明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 13量体Alは、液体NMRおよび固体NMRのいずれでも特異的に検出できる(図1)。
  2. 10mMモノマーAlイオン水溶液に水酸化物イオンを加えて中和すると、平衡pH4.2~4.3付近で13量体Alの生成量は最大となる(図2◆)。この時、最初に存在していたモノマーAlイオンの8割以上が13量体Alへと変換され、Alに対して加えた水酸化物イオンのモル比(OH/Al比)はおよそ2となる。
  3. 根圏の土壌中には低分子有機酸や腐植酸が豊富に含まれるが、Alとの親和性が高い低分子有機酸であるシュウ酸(ジカルボン酸)やクエン酸(トリカルボン酸)が存在すると、13量体Alの生成は大きく抑制される(図2□○)。腐植酸(ポリカルボン酸)もAlとの親和性は高く、同様の効果を持つ。しかし、Alとの親和性が低い酢酸(モノカルボン酸)では、13量体Alの生成を抑制する効果は低い(図2△)。
  4. 13量体Alは純粋な水溶液中でも長期間安定して存在できず、生成後30日目には大部分が消失する(図3●)。低分子有機酸は13量体Alの消失を促進し、その効果の大きさはAlとの親和性の順序と一致する(クエン酸≧シュウ酸>酢酸)(図3○□△)。
  5. 腐植酸は13量体Alと結合し、沈殿することによって13量体Alを水溶液中から除去する。腐植酸とともに沈殿した13量体Alは、徐々に分解される。
  6. 根圏では低分子有機酸や腐植酸が豊富に存在することから、13量体Alが植物生育阻害作用を発現し続けるような環境条件はほとんど存在しない。
成果の活用面・留意点
  1. 2:1型層状ケイ酸塩粘土、硫酸イオン、モノケイ酸、リン酸イオンも水溶液中の13量体Alを沈殿・除去することから、土壌溶液中で13量体Alは存在しにくいと言える。
  2. 酸性土壌における植物生育阻害のメカニズムを解明するためには、13量体AlではなくモノマーAlイオンが植物生育に及ぼす影響のメカニズムを解明する必要がある。同様に、Al耐性植物を作出するうえでは、13量体AlではなくモノマーAlイオンに対する耐性植物を作出する必要がある。
図表1 225440-1.jpg
図表2 225440-2.png
図表3 225440-3.png
図表4 225440-4.png
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