豚丹毒菌藤沢株からのノイラミニダーゼ産生遺伝子のクローニングと大腸菌での発現

タイトル 豚丹毒菌藤沢株からのノイラミニダーゼ産生遺伝子のクローニングと大腸菌での発現
研究期間 1993~1994
研究担当者 伊藤博哉
下地善弘
関崎勉
今田由美子
石川整
片岡康
木嶋真人
発行年度 1993
要約 豚丹毒菌の病原因子の一つと考えられているノイラミニダーゼを産生するための遺伝子を,強嵩株である藤沢株の染色体DNAからクローニングし大腸菌で発現させた。この遺伝子の大きさは約1,400塩基対で,コードする蛋白質の分子量は約62,000であった。
背景・ねらい 豚丹毒はErysipelothrix属菌の感染による豚の急性,亜急性,あるいは慢性疾病
で家畜法定伝染病に指定されている。現在,弱毒生菌や死菌ワクチンによる予防と
ペニシリンによる治療によって急性,亜急性型の疾病の発生は減少している。しか
し,慢性の関節炎にはほとんどの対策は無効で,畜産や食肉衛生上問題となってい
る。この菌の病原因子はまだあまり明らかでないが,他の病原細菌におけると同様
にノイラミニダーゼが本菌の病原性に関与していると考えられている。そこでノイ
ラミニダーゼ産生遺伝子のクローニングを行い,本酵素と病原性との関係を明らか
にし,本病の新しい予防・診断法の開発に資する。
成果の内容・特徴
  1. E.rhusiopathiaeの強毒株である藤沢株の部分消化した染色体DNAを,ベク
    ターpBluescript11にクローニングした。これを大腸菌に形質転換し
    ,この中からノイラミニダーゼを安定に産生するクローン1株(pENA1)が得
    られた。
  2. pENA1のインサートの制限酵素地図を作製し,ノイラミニダーゼ産生に必
    要な最小領域(約1,400塩基対)を決定した
    (図1)。この過程で最小領域を
    もつクローンpENA2を得た。
  3. pENA2の発現産物は約62,000ダルトンであった。
  4. pENA2の組み替え大腸菌は藤沢株の約500倍のノイラミニダーゼを主と
    して菌体内に産生した。
  5. pENA2のインサートの中の1,200塩基対をプローブとしてErysipelo
    thrix属菌の全血清型(1~23,N)について,それぞれの代表株の染色体DNA
    と68℃でサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,E.rhusiopathiaeは1
    株をのぞいて全株が反応した。しかし,豚に対する病原性が低いE.tonsillarumは
    全く反応しなかった。そこでハイブリダイゼーションの条件を緩やかな50℃にす
    ると約半数が反応した。このことから両菌種のノイラミニダーゼ産生遺伝子配列に
    は差があることが示唆された
    (図2)。
成果の活用面・留意点 今回クローニングしたノイラミニダーゼ産生遺伝子の塩基配列を決定することによ
り,本酵素欠損株の作出と遺伝子工学的手法による酸素の精製への道が開ける。ま
たE.rhusiopathiaeのPCRによる特異的検出などにも応用できると考えられた。
研究課題名:豚丹毒菌の抗原解析
予算区分 :経常
研究期間 :平成5年度(平成4~6年)
研究担当者:今田由美子,下地善弘,関崎勉,伊藤博哉,石川整,片岡康,木嶋真人
発表論文等:第116回日本獣医学会講演要旨集,p.150(1993).
日本細菌学雑誌,49巻1号,p.213(1994).
図表1 225550-1.gif
図表2 225550-2.gif
カテゴリ シカ

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