分泌シグナル切断点の人為的制御とそのタンパク質工学への応用

タイトル 分泌シグナル切断点の人為的制御とそのタンパク質工学への応用
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1989~1993
研究担当者
発行年度 1994
要約  ニワトリリゾチームシグナル配列のアミノ酸配列を遺伝子操作によって変換し,人為的にターン構造を誘起する事により,任意の部位で切断させることに成功した。これを応用して作成したN端末改変型リゾチームは,高pH,高塩濃度環境下でも高い溶菌活性を示した。
背景・ねらい  分泌性タンパク質のN末端部分はシグナル切断に関与するため,この領域のアミノ酸配列を変換するとシグナルの切断異常が起こる。そのためシグナル配列の切断機構の解明とその人為的制御はタンパク質工学における重要な問題のひとつであった。そこでシグナルの切断点近傍にプロリンを導入して人為的にターンを誘起する事で任意部位における切断を可能とした。またこれを応用してリゾチームのN末端を改変した組換え型リゾチームを酵母を用いて分泌生産し,その溶菌活性の特徴を調べた。
成果の内容・特徴
  1.  ターン誘起性アミノ酸であるプロリンを導入することにより,ニワトリリゾチームシグナルの切断点を任意に制御することに成功した(表1)。

  2.  プロリンを導入した改変型ニワトリリゾチームシグナルによって,N末端にAla,Val,Leu,Asn,Lysが延長された改変型ヒトリゾチーム(HLY)を酵母で分泌生産した。生産量は培溶液1リットルあたりそれぞれ0.66mg,0.28mg,0.06mg,0.22mg,0.30mgであった(表2)
  3.  溶菌活性のpH依存性を調べたところ,至適pHは野生型HLY:7.00,Ala-HLY:7.25,Val-HLY:7.25,Asn-HLY:6.50,Lys-HLY:7.50であった。野生型を含む他のHLYはいずれもpHの上昇につれて溶菌活性が減少したが,Lys-HLYは活性がほとんど低下しなかった(図1)。
  4.  溶菌活性の塩依存性を調べたところ,野生型を含むほかのHLYはいずれも塩濃度の上昇で活性が急激に低下し,150mM以上のNaCl存在下では全く溶菌活性を示さなかった。しかし,Lys-HLYでは比較的高い活性が維持され,200mMのNaCl存在下でも溶菌活性を有していた(図2)。
成果の活用面・留意点  タンパク質のN末端はユビキチン分解系や免疫寛容に関与するといわれているが,アミノ酸置換を自由に行えなかったため,研究が詳細に行われていない。本研究はシグナル切断点の人為的制御を可能とした。今後はこれらの分野の研究が進展して行くことであろう。
 リシンをN末端に延長したLys-HLYは野生型に比べて高pH,高塩濃度下で高い溶菌活性を示した。生体内は高塩濃度環境なのでLys-HLYは有望な抗菌剤になるかもしれない。
図表1 225562-1.gif
図表2 225562-2.gif
図表3 225562-3.gif
図表4 225562-4.gif
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