カビの毒素フザレノンーXは細胞にアポトーシスを誘導する

タイトル カビの毒素フザレノンーXは細胞にアポトーシスを誘導する
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1995~1998
研究担当者
発行年度 1999
要約   穀物を汚染するカビの毒素の一つであるフザレノンーXの細胞毒性について,マウス胸腺細胞と培養細胞HL-60を用いて調べたところ,いずれの細胞もアポトーシスによって傷害されることが明らかになった。
要約(英語) We determined that cytotoxicity of fusarenon-X (FX), a trichohtecene mycotoxin, is due to apoptosis both in vitro and in vivo. FX induced nuclear fragmentation of thymocytes (TUNEL staining and electron microscopy) in the thymic cortex in mice at a dose of 4.5 mg/kg or higher. DNA ladder patterns of 180 bp multimers were apparent in thymocytes both from these mice and those cultured with 0.5-1.0μg/ml of FX (agarose gel electrophoresis). Flowcytometric analysis of human promyelocytic cell line HL-60 exposed to FX showed an increment in the apoptotic population. This increment was inhibited by pre-treatment with ZnCl2 (inhibitor of DNase) or Z-Asp-CH2-DCB (inhibitor of caspase). Caspase-3 and -8 in the cytosol of HL-60 were activated 2 hours after exposure to FX. These results indicate that apoptotic mechanisms are involved in the toxicity of trichothecene mycotoxin fusarenon-X to animals. (Associate Director for Research, Department of Feed Safety TEL +81-298-38-7819)
References:
1. Miura, K., et al.: Induction of apoptosis with fusarenon-X in mouse thymocytes. Toxicology, 127 : 195-206 (1998)
背景・ねらい   わが国の湿潤な気候では,麦類をはじめとする穀類にカビが発生しやすく,その毒素で汚染された穀物の摂取によって家畜や人の安全性が脅かされる危険性が潜在している。
  麦の赤カビ病の原因菌であるフザリウムの作るトリコテセンマイコトキシン類は,家畜に下痢・食欲不振などの中毒症状や白血球減少など放射線障害に似た細胞傷害を起こす。すでに,トリコテセンの一つであるフザレノン-X
が,マウスの胸腺T細胞を傷害・減少させることを報告したが(家畜衛生成果情報No.8),このような細胞傷害がどのような様式と機序によるものかについて,マウスの胸腺細胞と培養株化細胞を用いて検討した。
成果の内容・特徴
  1. フザレノン-X (FX)投与マウスの胸腺組織にTUNEL(TdT-mediated dUTP nick end-labeling)染色を行ったところ,対照マウスに較べ陽性細胞が著明に増数し,電子顕微鏡観察では,核クロマチンが凝縮を起こしたり断片化した胸腺細胞をとりこんだマクロファージが多数認められた(図1)。
  2. FX投与マウスの胸腺細胞から DNA を抽出し,アガロ-スゲル電気泳動で調べたところ,180塩基対の倍数毎の断片化が認められた。また,培養した正常マウスの胸腺細胞にFXを添加しても同様に DNA
    の断片化が引き起こされた(図2)。以上から,FXはマウスの胸腺細胞にアポトーシスを誘導すると考えられた。
  3. FXを添加して培養した胸腺細胞のアポトーシスは,カスパーゼ阻害剤のZ-Asp-CH 2-DCB (Z-Asp)や Z-VAD-FMK を培地に共存させると強く抑制された。
  4. FXは培養 HL-60
    細胞(ヒト前骨髄性白血病細胞)にもアポトーシスを誘導した.このアポトーシスは,カスパーゼ8およびカスパーゼ3の酵素活性の上昇をともない(図3), DNA 断片化に関わるエンドヌクレアーゼの阻害剤
    ZnCl 2 やカスパーゼ阻害剤 Z-Asp
    の添加で強く阻止された(表1)。これらのことから,FXが誘導するアポトーシスにはカスパーゼが関わっていることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
      今回得られた成果により,穀物汚染マイコトキシンであるフザレノン-X細胞毒性にはアポトーシスが関与していることがはじめて明かとなった。近年,他のマイコトキシンにもアポトーシス誘導能があることが報告されており,今後マイコトキシンの毒作用の解明や制御に有益な資料となる。
図表1 225687-1.jpg
図表2 225687-2.jpg
図表3 225687-3.jpg
カテゴリ 飼育技術

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