新しい培養液を用いたブタ胚の体外生産法の開発

タイトル 新しい培養液を用いたブタ胚の体外生産法の開発
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2001~2004
研究担当者 岩村祥吉
吉岡耕治
鈴木千恵
発行年度 2003
要約 ブタ卵子・胚の体外受精、体外培養に適した新しい培養液PZMを開発し、ブタ胚の体外生産系を構築した。体外生産した胚を外科的及び非外科的に受胚豚に移植すると、正常な子豚が得られる。
キーワード ブタ、体外生産、胚移植
背景・ねらい
 体外生産・胚移植による家畜生産技術の開発は、品種改良や優良家畜の増産、健康家畜の生産等に大きく貢献する。これらの技術は発生工学的手法を用いた形質転換豚の作出にも必須である。特にブタでは慢性疾病の清浄化等の衛生問題の改善に加え、母豚側からの改良促進や優良遺伝子の保存等の観点からその有用性が期待されている。しかし、ブタでは、体外受精における多精子受精や体外培養における胚の品質の低下などの問題から、子豚生産に体外生産胚は十分には活用されていない。そこで、体外生産胚による子豚生産技術の確立を目的に、新たな体外受精・体外培養系を構築し、胚移植への応用を図る。
成果の内容・特徴 1.
新たに開発した培養液Porcine Zygote Medium(PZM)は、ブタ胚の体外培養に適している。新しい培養液の特徴は、ブタの卵管液の組成をもとに作製した化学的組成の明らかな完全合成培地であり、病原体などの未知因子の混入の可能性が極めて少ない。本培地の有用性は、培養した胚の外科的移植により正常な子豚が培養せずに移植した場合と同程度に生まれることから確認している。
2.
PZMをもとに作製したPorcine Gamate Medium(PGM)は、ブタの体外受精に用いることができる。PGMにテオフィリン、アデノシン及びシステインを加えることにより、安定した正常受精率が得られる(図1)。この体外受精及びPZMによる体外培養により生産した胚を4頭の雌豚に外科的移植したところ、全ての雌から正常な子豚が生まれ(表1及び図2)、新たに開発した方法は、ブタ胚の体外生産に有効である。
3.
アミノ酸組成を改良したPZMを用いて体外生産した胚を、子宮角深部注入用人工授精カテーテルを応用して非外科的に6頭の雌豚に移植すると、1頭の雌豚が妊娠し、子豚7頭を分娩している(表1)。
成果の活用面・留意点 1.
PZMは、(株)機能性ペプチド研究所から市販されている。
2.
体外生産胚の非外科的移植による生産技術は、と畜由来卵子が使用でき、移植のために特殊な設備を必要としないことから、養豚業への貢献が期待される。しかし、今回の体外生産・非外科的胚移植による受胎例は1頭のみで、子豚の作出効率は低い。そのため、本技術の実用化には体外生産法や移植法、受胚豚の条件などに関する検討と改善が必要である。
3.
これまで産業的利用が困難とされてきたブタ胚の凍結保存技術が改善されつつあることから、本技術と組み合わせることにより一層利用価値の高まることが期待される。
図表1 225765-1.gif
図表2 225765-2.jpg
図表3 225765-3.gif
カテゴリ 機能性 肉牛 品種改良

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