輸入アヒル肉からの新規遺伝子型H5N1鳥インフルエンザウイルスの分離

タイトル 輸入アヒル肉からの新規遺伝子型H5N1鳥インフルエンザウイルスの分離
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2003~2007
研究担当者 衛藤真理子(動物検疫所)
河岡義裕(東大医科研)
今井邦俊(帯畜大)
今田忠男
山口成夫
真瀬昌司
谷村信彦
中村菊保
塚本健司
堀本泰介(東大医科研)
発行年度 2005
要約  中国から日本に輸入されたアヒル肉から分離されたH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを遺伝学的ならびに病原学的に解析した。分離ウイルスは鶏に対し高病原性であり、既知の遺伝子型とは異なる新しい型である。
キーワード 家禽、高病原性鳥インフルエンザ、H5N1、遺伝子型
背景・ねらい  2003年5月に中国から日本に輸入されたアヒル肉からH5N1亜型鳥インフルエンザウイルス(A/duck/Yokohama/aq10/2003;横浜株)が分離され、韓国に輸入されたアヒル肉からも同亜型ウイルスが既に分離されていたことから、これらアヒル分離ウイルス株について、遺伝学的・病原学的に解析を行い、最近の分離株との比較を行う。
成果の内容・特徴 1.
横浜株について、全ウイルスゲノム塩基配列を決定し、アジア諸国で流行した高病原性鳥インフルエンザウイルスとの関連性を比較したところ、その遺伝子型はわが国で2004年分離された型 (genotype V)やアジアで優勢な型(genotype Z)とは異なる型であった(表1、図1)。
2.
横浜株の遺伝子解析の結果、ヒトで抗インフルエンザ薬として使用されているアマンタジンおよびオセルタミビルに対して耐性を示すようなアミノ酸変異は認められなかった。
3.
抗H5モノクローナル抗体を用いた抗原解析の結果、横浜株はわが国で2004年に分離された株(山口株)や1997年および2003年にヒトから分離された株とはその反応パターンが異なっていた。
4.
国際獣疫事務局(OIE)の基準に従って鶏への病原性試験を行った結果、横浜株は高病原性株であったが、経鼻接種試験にて調べたところ、山口株(平均2.1日)に比べその平均致死時間はやや長く(平均4.6日)、鶏病原性に違いがあることが明らかになった。
5.
ほ乳類感染モデルとしてマウスへの病原性を調べたところ、横浜株の50%マウス最小致死量(MLD50)は5×106EID50でそれほど高くなかったが、馴化を特に必要としなくともマウスの肺でよく増殖した。そして、接種後死亡したマウス脳から回収したウイルスはそのMLD50が約102EID50と著しく上昇したことから、容易にほ乳類に対する病原性が増大する可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点 1.
横浜株が既知の遺伝子型と異なる新しい型であったことから、アジアでは多種多様な遺伝子型のウイルスが存在していることが示唆される。またほ乳類感染モデルの試験結果において、ほ乳類に対し病原性を示しうることから、継続的なH5N1亜型ウイルスの詳細な分子疫学的・病原学的解析が重要と考えられる。
図表1 225816-1.gif
図表2 225816-2.gif
カテゴリ アヒル あま

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