BSEプリオンに感染するミクログリア細胞株の樹立

タイトル BSEプリオンに感染するミクログリア細胞株の樹立
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2004~2008
研究担当者 横山 隆
岩丸祥史
高田益宏
今村守一
清水善久
竹之内敬人
田川裕一
木谷 裕
発行年度 2006
要約  プリオン蛋白質過発現マウスから新たに樹立したミクログリア細胞株は、マウス馴化牛海綿状脳症(BSE)プリオンおよび複数のスクレイピー株に感受性を示す。
キーワード プリオン、ミクログリア、スクレイピー、BSE
背景・ねらい  プリオン病は、ヒトおよび動物に発生する一群の致死性神経変性疾患であり、ヒツジのスクレイピー、牛海綿状脳症(BSE)などが含まれる。罹患した動物は、数ヶ月から数年にわたる長い潜伏期の後に発症し、中枢神経系に海綿状変化を伴う変性が生じる。ミクログリア細胞は脳内に存在する貪食・抗原提示を担う細胞であり、プリオン病の病変形成に関与する可能性が指摘されている。しかし、現在までミクログリア細胞由来のプリオン感染細胞株は報告されておらず、プリオンによる神経変性の解析を困難なものとしている。そこでプリオン蛋白質(PrP)過発現マウスからミクログリア細胞株を新たに樹立し、プリオンの持続感染細胞の作出を試みることにする。
成果の内容・特徴
  1. 生後1日目のPrP過発現マウスの脳から分離、培養したミクログリアを不死化させることによって樹立された細胞株 (MG20細胞)はミクログリアのマーカー蛋白質を発現し、またPrPを過発現する。
  2. MG20細胞を、スクレイピー感染マウス脳乳剤存在下で5日間培養した後、96 well マイクロプレートに播種した。異常プリオン蛋白質(PrPSc)陽性細胞を酵素免疫測定法にて選択した。感染MG20細胞からはイムノブロット法と蛍光抗体法によりPrPScを検出できる(図1)。
  3. MG20細胞は、マウス馴化のBSEプリオンに加えて複数のスクレイピー株(Chan,ME7,Obi)にも持続感染する (図2)。
成果の活用面・留意点
  1. プリオン感染MG20細胞は,プリオン病による神経変性を実験室で解析するモデルとして重要であり、治療薬または感染特異的マーカーの探索に応用可能である。
  2. BSEプリオン感染細胞の作出は世界初である。スクレイピー株であるME7は細胞に感染し難いが、樹立されたMG20細胞にはME7も持続感染する。加えて、複数のプリオン株感染に感受性があるMG20細胞は、プリオン株を規定する因子の同定に有用である。
図表1 225857-1.jpg
図表2 225857-2.jpg
カテゴリ 播種

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