タイトル |
Streptococcus gordonii接着因子GspBおよびHsaの宿主組織への結合特異性 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2006~2007 |
研究担当者 |
Barbara A. Bensing(UCSF)
Gary A. Jarvis(UCSF)
Hui Cheng(UCSF)
Ian R. Siboo(UCSF)
J. Mcleod Griffiss(UCSF)
Jose A. Lopez(Baylor College of Medicine)
Paul M. Sullam(UCSF)
関崎 勉
高松大輔
大崎慎人
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発行年度 |
2006 |
要約 |
S. gordonii による感染性心内膜炎発症に関与すると考えられる菌体表層の接着因子GspBおよびHsaは、血小板膜上の糖蛋白質GPIbαに付加されているシアル酸を含む糖鎖構造を特異的に認識して結合する。さらに、GspBおよびHsaは、シアル酸を含む唾液中の糖蛋白質にも結合能を示す。
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キーワード |
感染性心内膜炎、血小板、S. gordonii 、GspB、Hsa、GPIbα、シアル酸
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背景・ねらい |
口腔内レンサ球菌や黄色ブドウ球菌による心内膜炎では、発症の最初の重要なステップとして、菌が心内膜の異常部位に付着している血小板に接着するという現象が知られている。
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成果の内容・特徴 |
- 口腔内レンサ球菌で、感染性心内膜炎の原因菌の一つでもあるStreptococcus gordoniiM99株およびChallis株では、それぞれGspBおよびHsaと呼ばれる相同性のある菌体表層蛋白が宿主血小板への接着に関与していることが知られていたが、その結合特異性については十分な解析がされていなかった。そこで本研究では、GspBおよびHsaの血小板膜上での標的分子の構造を明らかにするとともに、両蛋白質の唾液成分への結合能についても調べた。
- GspBおよびHsaの血小板膜上の主要な受容体は、糖蛋白質の一つであるGPIbαであり(図中)、その結合にはシアル酸によるGPIbαの糖修飾が必要である。
- GspBおよびHsaは、basic region (BR)と呼ばれる塩基性アミノ酸を豊富に含む領域を用いてGPIbαを認識する(図中)。HsaのBRは、GPIbα上のα(2-3) sialyllactosamine [NeuAcα(2-3)Galβb(1-4)GlcNAc] と sialyl-T antigen [NeuAcα(2-3)Galβ(1-3)GalNAc]のどちらにも結合するが、 GspBのBRはsialyl-T antigenにしか結合能を示さない(図中)。
- GspBおよびHsaのBRは、唾液中のシアル酸を含む糖蛋白質である低分子量ムチンMG2やsalivary agglutininにも結合能を示す(図中)。
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成果の活用面・留意点 |
- GspBの相同体は、S. gordonii だけでなく、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など、人や動物に病気を起こすいくつかのグラム陽性球菌にも共通に保存されている。従って、本研究での成果は、他の菌が保有するGspB相同体の宿主組織への結合特異性を解明する上で重要な手がかりとなる。
- 本研究で明らかとなった標的分子の構造を利用して、菌を宿主へ接着させないという戦略で疾病予防法を確立出来る可能性がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
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