黄色ブドウ球菌のバルク乳由来株はヒト由来株と異なる遺伝学的背景を示す

タイトル 黄色ブドウ球菌のバルク乳由来株はヒト由来株と異なる遺伝学的背景を示す
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2006~2006
研究担当者 関崎 勉
高松大輔
秦 英司
田中 聖
内田郁夫
発行年度 2007
要約  わが国における黄色ブドウ球菌のヒト由来株とバルク乳由来株はパルスフィールドゲル電気泳動ならびに各種表現型別により相互に関連性が非常に低く、また、ロイコシジンLukM/LukF’-PV遺伝子はバルク乳由来株の優勢遺伝子型でのみ検出される。
キーワード 黄色ブドウ球菌、パルスフィールドゲル電気泳動、LukM/LukF’-PV
背景・ねらい  黄色ブドウ球菌(SA)はヒトならびに家畜の様々な疾病の原因菌である。中でもメチシリン耐性株(MRSA)はそのほとんどが多剤耐性菌であり、病院内での蔓延が問題となっている。MRSAを含めたヒト由来SAの酪農現場への侵入が公衆衛生ならびに家畜衛生上懸念されるが、これまでヒトならびに牛乳から分離したSAの関連性は十分に解明されていない。そこでパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による遺伝子型別、各種表現型別を実施し両者の関連性を検討するとともに、SAの毒素遺伝子保有状況、薬剤感受性を調査することにより細菌学的特性を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 2004年に関東地域の81病院のヒト材料から分離したSA計114株と、2001年に北海道の279農場のバルク乳から分離したSA計279株はPFGE法により23遺伝子型(A-W)、172遺伝子亜型に型別される。ヒトMRSAの73%がA型、バルク乳由来株の94%がB型あるいはC型である。一方、ヒトメチシリン感受性株(MSSA)では明らかに優勢な遺伝子型は認められない(図1)。B型はヒトMRSA、ヒトMSSA、バルク乳由来株に共通の遺伝子型であるが、三者の間で共通の遺伝子亜型は存在しない。
  2. A型、C型ならびにバルク乳由来株のうちB型に型別されたほとんどの菌株は特定のコアグラーゼ血清型ならびに莢膜型を示す(表1)。
  3. バルク乳由来株でMRSAは検出されず、B型ならびにC型に属するほとんどのバルク乳由来株はアンピシリン、セファゾリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、バンコマイシンに感受性である(表1)。
  4. ロイコシジン(LukM/LukF’-PV)遺伝子はB型、C型に属するバルク乳由来株でのみ高率に検出される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 乳牛において黄色ブドウ球菌の多剤耐性化は認められず、今後さらなる抗生物質の慎重な使用が望まれる。
  2. LukM/LukF’-PV遺伝子はバルク乳由来株の優勢遺伝子型に属する菌株でのみ検出される毒素遺伝子であり、牛乳房炎に対する本毒素の関与が疑われる。
図表1 225879-1.jpg
図表2 225879-2.gif
カテゴリ 飼育技術 耐性菌 乳牛 薬剤

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