牛伝染性鼻気管炎の現行ワクチン株と野外株を識別できるPCR法

タイトル 牛伝染性鼻気管炎の現行ワクチン株と野外株を識別できるPCR法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2003~2008
研究担当者 亀山健一郎
小西美佐子
神吉 武(富山県東部家保)
泉對 博(日大生物資源)
前田有紀子(愛知県西三河家保)
村上賢二
発行年度 2008
要約  PCR法によって牛伝染性鼻気管炎を疑う事例でしばしば分離されるウイルスがワクチン株であるか野生株であるかが迅速に鑑別でき、本病の診断と防疫対応に応用できる。
キーワード 牛伝染性鼻気管炎、PCR
背景・ねらい  牛伝染性鼻気管炎は牛ヘルペスウイルス1型(BHV-1)により引き起こされる呼吸器および生殖器の疾病で、世界各国の畜産農家で大きな経済的損失を生んでおり、日本では届出伝染病に指定されている。ウイルスは症状が治まった後も体内で潜伏感染しており、輸送や妊娠といったストレスをきっかけに再活性化して他の牛に感染するようになる。日本では生ワクチンの接種によって本病の発症を抑制し感染拡大を防止しているが、ワクチンウイルスによる発症事故例が報告されている。発症牛からウイルスが分離された場合、分離ウイルスがワクチン株か野外株であるかを識別することが、その後の防疫に重要である。しかし、現在使用されている生ワクチンには野外株と識別出来るようなマーカーは付与されておらず鑑別は困難であった。本研究は、PCR法を用いてワクチン株と野外株を迅速に識別可能な方法を開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 現行生ワクチン株には制限酵素HindⅢ/PstⅠによるJ断片上に652 bpの欠失部位が存在する(図1)。
  2. BHV-1野外株(758株)とワクチン株から抽出したDNAを用い、新たに作製したプライマ-セットおよび反応条件でPCR反応を行うと、両者のPCR産物の分子量に明瞭な差異がある(表1、2及び図2)。
  3. 開発したプライマーセットを用いたPCR検査では、44株の国内分離BHV-1は全てBHV-1野外株758株のものと同一サイズのPCR産物が得られ、その塩基配列は1株を除き完全に一致している(1株は一致率99.9%)。
  4. BHV-1以外のヘルペスウイルス属のウイルス(BHV-2、AHV-1(旧BHV-3)、BHV-4)では増幅は観察されない(図2)。
  5. 開発したPCR法を用いて牛伝染性鼻気管炎の病性鑑定を行い、ワクチンの不適切な接種による事故ではなく、野外株による発症であったことを確認している。
成果の活用面・留意点
  1. 本PCR法は、従来の豚睾丸細胞を用いた30℃7日間培養によるウイルスの増殖性による識別方法に比較し時間と労力を必要とせず、病性鑑定時には感染ウイルスを迅速に識別可能となる。
図表1 225897-1.gif
図表2 225897-2.jpg
図表3 225897-3.gif
図表4 225897-4.gif
カテゴリ 輸送

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる