ルーメン内プロピオン酸産生速度の変化が血中尿素態窒素動態に及ぼす影響

タイトル ルーメン内プロピオン酸産生速度の変化が血中尿素態窒素動態に及ぼす影響
担当機関 畜産試験場
研究期間 1995~1995
研究担当者
発行年度 1995
要約 飼料への易発酵性炭水化物添加によるルーメン内プロピオン酸産生の増加は、血中グルコース代謝およびインシュリンレベルの上昇を介して、血中尿素の合成速度の低下に寄与し、また、血中尿素の消化管内への移行速度の上昇にも影響する。
背景・ねらい 反芻家畜の窒素(N)排泄量の制御は、生産効率だけでなく、環境負荷要因という点からも重要な問題の一つである。尿中への尿素の排泄が、飼料への易発酵性炭水化物の添加によって減少することが報告されているが、この時、ルーメン内ではプロピオン酸濃度の明らかな上昇が認められる。そこで本研究では、プロピオン酸産生速度の上昇が、血中尿素N動態にどの様な影響を及ぼすかを、15Nおよび13Cをトレーサーとした同位元素希釈法によって明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴
    去勢成メン羊にアルファルファヘイキューブを基礎飼料として給与し、①易発酵性炭水化物であるショ糖の飼料への添加、②プロピオン酸ナトリウムの添加、および③血中へのインシュリンとグルコースの注入による、ルーメン内プロピオン酸、血中尿素およびグルコースの代謝速度の変化を調べた。
  1.  基礎飼料へのショ糖添加によって下部消化管における非アンモニア態N(アミノ酸およびペプチドが主体)の吸収速度が増加し、アミノ酸(等からの尿素の生成速度は上昇する傾向にあった(表1)。一方、ルーメン内プロピオン酸以外(アミノ酸等が主体)のC源からのグルコース合成速度には変化が認められなかったことから、アミノ酸からのグルコース合成の亢進による尿素は、アミノ酸等からのグルコース合成を抑制すると考えられたこと(表2)から、プロピオン酸産生速度の上昇は、血中インシュリンレベルを介して、アミノ酸Nに由来する尿素の生成を抑制する効果を持つと考えられた。
  2.  基礎資料へのショ糖添加による尿中への尿素排泄速度の低下は、ルーメン内への尿素移行速度の上昇がその一因となっていた(表1)。プロピオン酸ナトリウムを飼料に添加した場合には、尿素の血中濃度が明らかに低下したにもかかわらず、そのルーメン内への移行速度および消化管経由でのリサイクル速度の低下は認められず、また、血中にインシュリンとグルコースを注入した場合にも、同様の結果が得られた(表2)。これらの結果は、プロピオン酸産生速度の上昇がグルコース代謝の変化を介して、血中尿素の消化管内への移行を促進する効果を持つことを示唆するものと考えられた。
成果の活用面・留意点
  1.  本研究の結果は、飼料中Nの利用効率、あるいはN排泄量の制御を目的とした、飼養条件改善のための基礎的なデータとなる。
  2.  13C標識体による代謝速度測定法は、14Cの利用が困難な中、大型家畜に有効な方法である。ただし、グルコース中Cのリサイクルの多い泌乳、妊娠中の動物の場合は、グルコース合成速度の測定には2H標識グルコースを用いる必要がある。
図表1 225970-1.jpg
図表2 225970-2.jpg
カテゴリ アルファルファ

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