コムギのプロトプラスト倍養系の確立

タイトル コムギのプロトプラスト倍養系の確立
担当機関 農業生物資源研究所
研究期間 1994~1995
研究担当者
発行年度 1994
要約  国内のコムギ品種「中相州」の未熟胚由来カルスを用いて懸濁細胞培養系を確立した後、プロトプラストの単離・培養を行い、コロニー形成、カルス形成、シュート形成、発根を経て、稔性のある完全な植物体を再生させることに成功した。
背景・ねらい  ムギ類、特にコムギは世界的に重要な作物であり、欧米を中心に活発な研究が進められてきたが、近年になりようやく、プロトプラストからの植物体再生や遺伝子導入の成功例が報告されるようになった。しかし、これらはいずれも適用品種が限られ、安全な細胞培養系が確立されたとは言い難く、汎用性のある技術の確立が望まれていた。また、わが国での成功例はほとんどなかった。そこで、本研究では主として国内の品種を用いて、安定したプロトプラスト培養系の確率を目指した。
成果の内容・特徴
  1.  国内の品種として中相州、国外の品種としてオーストラリアのBodallinを用い、開花後14日頃の未熟胚から、まずembryogenicカルスを誘導し、このカルスから懸濁細胞培養系を確立した。3%セルラーゼオノズカRS及び0.1%ペクトリアーゼY-23を含む酵素液を用いて懸濁培養細胞からプロトプラストを単離した(図1)。プロトプラストの収量、活性及び分裂頻度は3~6か月間継代した懸濁培養細胞から単離したもので高かった(表1)。
  2.  次いで、グルコース90g/1を含むMKMP培地を用いて、26℃、暗条件下でプロトプラストの培養を行ったところ、5~6週間後にコロニーを形成した(図2)。
  3.  さらに、コロニーを修正B5培地で3~4週間培養した後、発達したカルスをカイネチン2mg/1とIAA1mg/1を含むMS培地で培養を続けたところ、1か月後にシュートを形成した(図3)。これらのシュートはNAA0.2mg/1とIAA0.2mg/1を含む1/2MS培地に移植し、発根を促した。中相州の場合、320個のカルスから58個の幼植物体が得られた。発根した幼植物体は鉢上げし、稔性のある完全な植物体を得ることができた。
  4.  また、オオムギ、コムギ及びソルガムの細胞系統をナース細胞として用いてプロトプラスト培養を行ったところ、プロトプラストの分裂頻度とコロニー形成率はともにコムギ細胞とソルガム細胞の場合に高く、オオムギ細胞で低かった(表2)。
成果の活用面・留意点  これまでわが国ではコムギのプロトプラスト培養の成功例はなく、プロトプラストからの植物体再生は困難とされていたが、本研究で国内のコムギ品種でもプロトプラストからの植物体再生が可能となったことにより、エレクトロポレーションによる遺伝子導入など新しい育種技術開発への道が開けた。しかし、プロトプラスト由来植物体の稔性を高める培養技術の開発は今後も続ける必要がある。
図表1 226147-1.gif
図表2 226147-2.gif
図表3 226147-3.gif
図表4 226147-4.gif
図表5 226147-5.gif
カテゴリ 育種 大麦 ソルガム 品種

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