タイトル |
牛筋肉内脂肪前駆細胞(BIP細胞)のカベオラ様膜ドメインの解析 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
宮下範和
竹之内敬人
竹澤俊明
麻生久
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発行年度 |
2001 |
要約 |
牛筋肉内脂肪前駆細胞(BIP細胞)の脂肪細胞分化に伴いカベオリン-1蛋白質発現の増加が認められ、中間フィラメントであるビメンチンとカベオリン-1のカベオラ様膜ドメインにおける相互作用が細胞内への脂肪蓄積の制御に関与している可能性が示唆された。
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キーワード |
牛筋肉内脂肪前駆細胞、カベオラ、カベオリン-1、ビメンチン
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背景・ねらい |
牛骨格筋内における脂肪組織は脂肪交雑として肉質を評価する上で大変重要な要素の一つである。本研究では、牛脂肪前駆細胞株の特性の解析、特に筋肉内での脂肪細胞分化に特異的に関与するような因子を探索しその遺伝子及び機能解析を行うことにより、脂肪交雑形成機構の解明とそれら有用遺伝子の利用技術の開発を目的とする。本年度は、脂肪細胞分化との関連が最近注目されつつあるカベオリン-1蛋白質の牛脂肪細胞分化への関与について細胞骨格蛋白質との関連を中心に、当研究室で既に樹立している牛筋肉内脂肪前駆細胞(BIP細胞)を用いて検討を行った。
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成果の内容・特徴 |
牛各臓器におけるカベオリン-1蛋白質の発現について検討した結果、脂肪組織での顕著な発現が観察された。(図1A) BIP細胞は分化誘導培地(10%FBS、50ng/mlインスリン、0.25μMデキサメタゾン、10mM酢酸、5mMオクタン酸含有のDMEM)中で培養することで脂肪細胞に分化するが、その分化誘導に伴いカベオリン-1の発現量が増加することがわかった。(図1B) BIP細胞抽出物のショ糖密度勾配遠心の結果、中間フィラメントであるビメンチンがカベオリン-1と同様の画分(フラクション番号4、5、6:カベオラ様膜ドメイン)に局在することがわかった。(図2) 免疫沈降法によりカベオリン-1とビメンチンの相互作用が確認された。(図3) 微小管阻害剤であるノコダゾールはビメンチン骨格を破壊することが知られているが、BIP細胞をノコダゾールで処理することによりカベオラ様膜ドメインに局在するビメンチン量が顕著に減少することが示された。(図4A) ノコダゾールを添加した分化誘導培地中でBIP細胞を培養した結果、脂肪細胞分化に伴う細胞内へのトリグリセライド(TG)蓄積量が無添加の場合と比較して有意に増加することが示された。(図4B) 以上の結果からBIP細胞の脂肪細胞分化におけるカベオリン-1の関与が推測され、またビメンチンのカベオラ様膜ドメインへの局在が細胞内脂肪蓄積の制御機構に関与している可能性が示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
- カベオリンファミリー蛋白質には現在までにカベオリン-1、-2、-3の3種類の存在が報告されており、カベオリン-1、-2は脂肪組織に豊富に存在しカベオリン-3は筋肉に特異的に発現することが知られている。
- 筋肉細胞及び脂肪細胞は同じ間充織幹細胞から最終分化してくることから、カベオリンファミリー蛋白質の発現調節がそれぞれの細胞分化に深く関与している可能性が考えられ、筋肉内における脂肪細胞分化機構への関与も推測される。
- カベオリンファミリー蛋白質の発現調節についての検討、また、筋肉細胞及び脂肪細胞両方に分化可能な牛由来間充織細胞株を利用した解析などが脂肪交雑機構解明においても今後有効になっていくと考えている。
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カテゴリ |
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