膜翅目昆虫カブラハバチにおける形質転換系の確立

タイトル 膜翅目昆虫カブラハバチにおける形質転換系の確立
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 [炭谷めぐみ
加藤祐輔
山本大介
大石陸生(神戸大)]
中尾肇
畠山正統
李載日文(JSPS 特別研究員)
茗原眞路子
発行年度 2002
要約 トランスポゾンpiggyBacをベクターに、緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子をレポーターに用い、膜翅目昆虫で初めて、安定した外来遺伝子導入・形質転換系を開発した。ゲノム中に組込まれた遺伝子は次世代に受け継がれ、形質転換系統が確立できた。
キーワード カブラハバチ、形質転換、トランスポゾン、piggyBac、顕微注入
背景・ねらい 遺伝子の機能解析のためには、外来遺伝子を安定にゲノム中に導入する実験系が有効である。昆虫では、キイロショウジョウバエで P 因子というトランスポゾンによる形質転換系が確立されて以来、様々な昆虫で形質転換系の開発が試みられてきた。しかしながら、双翅目昆虫(ハエ・カのなかま)以外での成功例は、カイコをはじめとして現在3種の昆虫にとどまっており、いずれも piggyBac とよばれるトランスポゾンを用いたものである。
膜翅目昆虫(ハチのなかま)には、農業害虫となるハバチのほかに、蜂蜜を産出するミツバチ、天敵昆虫として有用な寄生蜂、花粉媒介昆虫のハナバチなど、農業に密接に関与する種が多く属している。そこで、膜翅目昆虫における遺伝子機能の解析と、繁殖制御への応用をめざして、トランスポゾンを利用した形質転換系の開発を行なった。
成果の内容・特徴
  1. トランスポゾンpiggyBacをベクターに用い、恒常的に GFPレポーター遺伝子を発現できるようなプラスミドを構築し、転移酵素を産出するプラスミドとともに、カブラハバチ卵の後端に顕微注入した。生存した個体を交配して得た次世代を調べたところ、約5%の形質転換率で、GFP 遺伝子を発現する系統が得られた(図1)。
  2. GFP 遺伝子を発現する系統の個体から DNA を抽出してサザンブロット解析した結果、導入した GFP 遺伝子がゲノムに組込まれ、安定して次世代に受け継がれていることがわかった(図2)。
  3. カブラハバチのゲノムに組込まれた GFP 遺伝子の隣接領域を調べたところ、piggyBacトランスポゾンの標的配列である TTAA 配列が認められ、外来遺伝子の組込みが偶然ではなく、トランスポゾンによって起きたことが証明された。
成果の活用面・留意点
  1. 膜翅目昆虫でも遺伝子機能解析を行なうための基盤となる形質転換系が確立できたが、さらに、導入した遺伝子の発現を外部から制御ができるプロモーターを用いたベクターの構築が必要である。
  2. もともと利用価値のある膜翅目昆虫に有用遺伝子を導入することによって、より付加価値の高い系統の作出が可能になると期待される。
  3. 膜翅目昆虫では一般に、受精卵からメスを生じ、未受精卵からはオスを生じる。その結果、卵形成時には減数分裂を行なうが、精子形成時には行なわない。したがって、性と減数分裂が密接に関連していると考えられる。これらの事象に関与する遺伝子の機能が解析できれば、有性生殖(性)の進化と減数分裂の制御という、新たな視点からの研究を創出できる。
カテゴリ カイコ 害虫 かぶ 繁殖性改善 ミツバチ

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