タイトル | カイコの新規核内レセプターBmHR78の遺伝子発現と性質の解明 |
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担当機関 | 昆虫適応遺伝研究グループ |
研究期間 | 1999~2001 |
研究担当者 |
塩月孝博 神村学 冨田秀一郎 平井誠(特別研究員) |
発行年度 | 2002 |
要約 | カイコから新規核内レセプターを単離し、遺伝子の発現とタンパク質間相互作用を調べた。その結果、新規核内レセプター遺伝子は、精巣で特異的に発現していたが、終齢期での発現量に変化はなかった。 |
キーワード | 核内レセプター、オーファンレセプター、エクダイソンレセプター、Ultraspiracle(USP) |
背景・ねらい | 内分泌系による昆虫の発育制御機構の中で、幼若ホルモン(JH)はその全てに深く関与しているが、その分子レベルでの作用機構はほとんど未解明のままである。その鍵となるJHレセプターが単離・同定されていないのが、大きな障害となっている。エクダイソンの情報伝達カスケードでは、broad complexなど初期遺伝子の発現をJHが抑制することも報告されており、そこで機能する核内因子の一つがJHレセプターである可能性が示唆されている。そこで、カイコから核内レセプタースーパーファミリーに属する未知のオーファンレセプターの探索を行った。 |
成果の内容・特徴 | 核内レセプターのDNA結合領域において高度に保存されているアミノ酸配列をもとにdegenerate primersを設計し、カイコcDNAライブラリをスクリーニングしたところ、リガンド結合領域が既知の核内レセプターと相同性を示さない新規のオーファンレセプターが得られ、BmHR78と命名した。幼虫5齢期の各器官におけるBmHR78 mRNAの発現量は精巣でもっとも高く、5齢期を通じて常に発現していた。既知の核内レセプターとの相互作用を酵母2-ハイブリッド法で調べたところ、表1に示すようにBmHR78はホモダイマーを形成したが、それよりもさらに強くエクダイソンレセプター(EcR)のパートナーであるUSPとヘテロダイマーを形成することが分かった。Ultraspiracle(USP)と結合する分子としてEcRとDrosophilaのDHR38がいままで知られていたが、BmHR78 はそれらのいずれともアミノ酸配列レベルで相同性が低く、これはBmHR78が新規レセプターであることを示唆する。さらに、USPは精巣でも発現していることを確認しており、実際にin vivoにおいてもBmHR78はUSPと結合する可能性が推測される。 |
成果の活用面・留意点 | BmHR78はUSPと結合したことから、EcRとUSPの結合と競合することで、エクダイソンの情報伝達を抑制することが考えられる。また、その制御におけるJHの関与を検討することにより、JHの作用機構の一端が解明される可能性がある。 |
カテゴリ | カイコ |