タイトル |
低グルテリン・26kDaグロブリン欠失の水稲新品種候補系統「放育2号」 |
担当機関 |
農業技術研究機構 |
研究期間 |
1994~2002 |
研究担当者 |
井辺時雄
宮原研三
佐藤宏之
西村実
西尾剛
草場信
飯田修一
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発行年度 |
2002 |
要約 |
水稲「放育2号」は熟期が早生の中で温暖地東部から寒冷地南部まで栽培可能である。玄米中の易消化性蛋白質であるグルテリン含量が少ないことに加えて、同じく易消化性蛋白質の26kDaグロブリンが欠失しており、蛋白質摂取が制限される慢性腎不全患者の病態食への利用が期待される。
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キーワード |
水稲、グルテリン、グロブリン、易消化性蛋白質、慢性腎不全、病態食
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背景・ねらい |
腎臓病患者の食事療法用主食として先に「エルジーシー1」等が育成されているが、これらは易消化性蛋白質の一つであるグルテリン含量を低下させ、難消化性蛋白質であるプロラミンを増加させることによって実質的な低蛋白質化を達成している。しかし、易消化性蛋白質のグロブリンが通常品種に比べて若干増加しており、これを除去することにより「エルジーシー1」以上の低蛋白質化が可能である。そこで易消化性蛋白質を「エルジーシー1」以上に低下させた低蛋白質米品種を育成し、慢性腎不全患者の病態食としての用途を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 「放育2号」はイネ種子の主要な蛋白質であるグルテリンが減少した突然変異由来系統「エルジーシー1」に26kDaグロブリン欠失突然変異系統(コシヒカリ由来)を交配して育成された粳系統である(表1)。
- 稈長は品種「エルジーシー1」並かやや短く、穂数は「エルジーシー1」に比べてやや多い短稈穂数型である。葉立性は「エルジーシー1」と同程度で草姿良好である。粒着密度は“中”である。芒は認められず、ふ先色は“白”、脱粒性は“難”である(表1)。
- 出穂期は「コシヒカリ」よりやや早く、関東地方では“早生の中”に属し、温暖地東部から寒冷地南部までの栽培が期待される。耐倒伏性は「エルジーシー1」と同程度の“やや強”である。圃場抵抗性は葉いもちは“やや弱”、穂いもちは“弱”である。白葉枯病は“中”である。穂発芽性は“やや難”である。収量性は「エルジーシー1」よりやや劣る(表1)。
- 易消化性蛋白質は通常品種の半分近いレベルまで減少しており、医療関係者から求められていた50%の低蛋白質化をほぼ達成している。総蛋白質含量は「エルジーシー1」と同程度である(表1、2)。
- 玄米の粒形は“中”である。腹白、心白、乳白は「エルジーシー1」よりやや多く、特に乳白の発生が多く、玄米品質は「エルジーシー1」より劣る。搗精歩合は「エルジーシー1」より劣る。食味は「エルジーシー1」と同程度である(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 慢性腎不全患者の食事療法用「低蛋白質米」としては多肥による総蛋白質の増加は回避しなければならないので適度の施肥管理が必要である。
- 玄米の外観品質では通常品種との識別が困難であることから、「低蛋白質米」としての純度を保つためにより厳格な種子管理と品質管理が不可欠である。
- 慢性腎不全患者の食事療法用主食として用いる場合は医師による適切な指導が必要である。
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カテゴリ |
新品種
水稲
施肥
抵抗性
品種
良食味
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