イネの紫外線抵抗性を付与する遺伝子

タイトル イネの紫外線抵抗性を付与する遺伝子
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 井沢毅
山本伸一
上田忠正
矢野昌裕
発行年度 2003
要約 イネは品種により紫外線抵抗性が異なるが、この差の主な原因となる遺伝子を単離した。その遺伝子を紫外線感受性イネに導入することにより紫外線抵抗性を付与できる。
キーワード 紫外線抵抗性、量的形質遺伝子座(QTL)、マップベースクローニング、光回復酵素、形質転換イネ
背景・ねらい フロンガス等によるオゾン層の破壊により地上に届く紫外線量の増加が危惧される中、その作物の生育への影響が注目されている。イネの品種間には紫外線に対する抵抗性の程度に関して変異が認められており、日本晴(日本型品種;紫外線抵抗性)とKasalath(インド型品種;紫外線感受性)の雑種後代を利用した解析によって少なくとも3つの量的形質遺伝子座(QTL)の関与が明らかとなっている。本研究では、そのうち寄与率の最も大きな第10染色体上のQTLをマップベースクローニング法により単離・同定する。
成果の内容・特徴
  1. 日本晴とKasalathの戻し交雑後代系統を利用して、qUVR-10の詳細な連鎖解析を実施し、qUVR-10の候補ゲノム領域を約27-kbに絞り込んだ。候補ゲノム内には6つのORFsが予測され、そのうちの1つが紫外線によるDNA損傷を光を利用して修復する酵素(CPD光回復酵素)と高い相同性を示した(図1)。
  2. qUVR-10領域がKasalathの染色体断片に置換された日本晴の準同質遺伝子系統[NIL(qUVR-10)]を作成した。NIL(qUVR-10)は日本晴と比べて光回復能力がで低いことが判明した(図2)。
  3. NIL(qUVR-10)に日本晴のCPD光回復酵素遺伝子のみを含むゲノム断片を形質転換した。その個体の後代は日本晴と同等の紫外線抵抗性を示した。したがってqUVR-10は光修復酵素をコードしていると結論した(図3)。さらに導入遺伝子を多コピーもつ系統は光修復酵素遺伝子が過剰発現しており、非常に強い紫外線抵抗性を示した(図4)。
  4. 日本晴とKasalathのCPD光回復酵素遺伝子には、エクソン内に3箇所、イントロン内に6箇所の塩基置換および2箇所の挿入が見られた(図5)。そのうち第4エクソン内の塩基置換により1アミノ酸置換を生じることが推定された。この変異によりCPD光回復能力が低下し、紫外線感受性になると思われる。

図1

図2

図3

図4

図5
成果の活用面・留意点
  1. イネにqUVR-10を導入することにより、紫外線抵抗性を改善できる可能性がある。
  2. 多くのインド型品種はKasalath型のCPD光修復酵素遺伝子を持っており、紫外線感受性であると考えられる。紫外線量の増加によりインド型品種の生育・収量がうける影響を調査する必要がある。
図表1 226378-1.jpg
図表2 226378-2.jpg
図表3 226378-3.jpg
図表4 226378-4.jpg
図表5 226378-5.jpg
カテゴリ 抵抗性 品種

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