フィトクロムは、イネにおける唯一の赤色光受容体である

タイトル フィトクロムは、イネにおける唯一の赤色光受容体である
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2003~2007
研究担当者 高野 誠
稲垣 言要
清田 誠一郎
発行年度 2005
要約 イネのフィトクロム全分子種(phyA, phyB, phyC)の単独・二重・三重突然変異体を作出し、それらの表現型および遺伝子発現解析から、フィトクロムがイネの開花時期や生長の制御に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、フィトクロムが植物における赤色光の唯一の光受容体であることを初めて証明した。
キーワード
イネ、フィトクロム、突然変異体、光応答反応、開花時期制御
背景・ねらい 光は植物にとって最も重要な環境情報であり、生長、分化、代謝などの制御に重要な役割を果たしている。したがって、光シグナルの受容・伝達メカニズムの全容についての高度な理解とその応用は、ポスト・イネゲノム研究がめざす有用形質の機能解明の大きな目標の一つといえる。本研究では、イネのフィトクロム突然変異体を用いて、光が関与する2つの重要な生理反応である開花時期制御と芽生えの光形態形成反応を、形質発現と遺伝子発現の両面から詳しく解析し、開花や光形態形成の人為的な制御に向けての基盤づくりを目指した。
成果の内容・特徴
  1. イネは3種類のフィトクロム(phyA, phyB, phyC)を持つ。これら全ての分子種に対る突然変異体を単離し、さらに全ての組合せの多重突然変異体を作出して比較解析することにより、以下に示すような分子種毎の特異性や協調作用を明らかにした。
  2. phyB, phyC 突然変異体は、いずれも自然日長下では日本晴に比べて10日程度早く開花した。このことからphyB, phyCには開花を抑制する作用があることが分かった。phyA 突然変異は、単独では開花時期にあまり影響を及ぼさないが、phyAB あるいは phyAC 二重突然変異体では、開花時期が著しく早まったことから、phyAはphyBやphyCと協同して開花を抑制していることが分かった(図1)。
  3. phyABC 三重突然変異体は半矮性で、草型は通常のイネとは大きく異なり、短い葉が株元からではなく桿の途中から横に突き出すように出ていた(図2)。したがって、フィトクロムは環境からの光情報によって節間伸長や葉身および葉鞘の伸長を制御し、イネの形態形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
  4. phyABC 三重突然変異体は赤色光を全く感知しないことを明らかにした(図3)。これは、フィトクロムが植物における赤色光の唯一の光受容体であることを直接的に証明した初めての報告である。
  5. シロイヌナズナを用いた解析から、フィトクロムの特徴的な反応である赤色/遠赤色光可逆反応は主にphyBが担っていると考えられてきた。しかしイネではphyAもphyBと同様に光可逆反応に関わっていることが分かった。それ以外にもイネでは、3種類のフィトクロム分子種間でシロイヌナズナとは異なる役割分担があることを明らかにした(図4)。
成果の活用面・留意点 phyABC 三重突然変異体を用いることにより、「光合成に必要な光」と 「シグナルとしての光」を分けることができ、これまで実験が不可能であった光シグナルの有る無しによる植物の環境ストレス応答を調べることが出来る新しい系を提供できるのではないかと考えている。
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