タイトル | 計画的な点変異の導入による除草剤耐性イネの作出 |
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担当機関 | (独)農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2002~2007 |
研究担当者 |
遠藤真咲 刑部敬史 土岐精一 |
発行年度 | 2007 |
要約 | 除草剤(BS)の標的酵素をコードする遺伝子に対して、ジーンターゲッティング手法を用いてBS耐性形質を与える点変異を導入し、BS耐性のイネを作出することに成功した。また、BS耐性型遺伝子(酵素)のみを持つイネは、BSに対して高度な耐性を示すことが明らかとなった。 |
キーワード | ジーンターゲッティング、アセト乳酸合成酵素 (ALS)、イネ、ビスピリパックナトリウム塩 (BS) |
背景・ねらい |
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成果の内容・特徴 | 1.ジーンターゲッティングとは、染色体上のゲノム配列と相同性のある外来遺伝子を核内に導入し、染色体上の遺伝子が外来遺伝子で置き換わった細胞を選抜する技術である。本研究では、ジーンターゲッティングにより、除草剤 (ビスピリパックナトリウム塩, BS) 感受性型のイネALS遺伝子をBS 耐性型ALS遺伝子で置換することに成功した。 2.ジーンターゲッティングが生じた場合のみ、BS耐性を付与するベクターを作製した。ジーンターゲッティングベクター上のALS遺伝子は、BS耐性を付与する二点変異(W548L, S627I)を含んでいるが、開始コドンから約150bp を欠損しているため、イネゲノム中へのランダムな挿入ではBS 耐性を付与しない。イネゲノム中のALS遺伝子とベクター上のALS遺伝子間で相同組換えが生じ、BS 耐性変異を含む機能的なALS遺伝子が構成された場合のみBS耐性となる(図1)。 3.約1500個のイネカルスにジーンターゲッティングベクターを形質転換した後、BS耐性細胞の選抜を行い、最終的に66個体のジーンターゲッティングを生じた植物体を獲得した。 4.ジーンターゲッティング後代で得られたBS耐性型ALS遺伝子ホモ接合体は、従来の形質転換法で作出したBS耐性型ALS遺伝子過剰発現イネと比較して著しいBS耐性を示した (図2、3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.ジーンターゲッティング手法によるイネの遺伝子破壊は既に報告例があるが、計画通りに点変異を導入した報告は初めてである。ジーンターゲッティングにより点変異を導入する技術は、特定の遺伝子に狙いを定めた突然変異育種法として、今後活用されることが期待される。 2.除草剤耐性とは異なり、点変異の導入そのものが選抜形質とならない遺伝子にも適用可能なジーンターゲッティング系の構築が今後の課題である。 |
カテゴリ | 病害虫 育種 除草剤 |