コメの粒幅を大きくしたDNA変異の同定とイネ栽培化における役割の解明

タイトル コメの粒幅を大きくしたDNA変異の同定とイネ栽培化における役割の解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2009
研究担当者 井澤 毅
江花薫子
小西左江子
正村純彦
矢野昌裕
発行年度 2008
要約
イネの粒幅を決める遺伝子のひとつqSW5 を単離し、日本晴がqSW5欠失変異により、収量性が増加することを明らかにした。また、その欠失の有無を各種イネ在来品種で調べ、他の栽培化関連変異の分布と比較することでこの変異の栽培化における貢献を明らかにした。5個の栽培化関連遺伝子に関して、古代人による選抜をうけた遺伝変異の在来品種の分布から、ジャポニカイネの起源・形成過程に関して、新しい説を提唱した。
キーワード コメ、粒幅、栽培化、収量性、ジャポニカ品種
背景・ねらい
イネ品種間差のひとつ、コメの大きさ(シンクサイズ)に影響を与える粒幅のQTL解析をすることで、イネの重要な農業形質に関する遺伝子を単離し、今後の新しいマーカー育種に応用する。また、シンクサイズの決定分子機構を明らかにし、将来の応用研究につなげる。
成果の内容・特徴 ジャポニカ品種日本晴とインディカ品種カサラスのイネ品種間QTL解析を行い、粒幅に影響のある遺伝子座を同定し、そのうちの一つであるqSW5 遺伝子をファインマッピングにより同定し、配列比較により、機能欠損を起こす欠失変異を発見した(図1)。
相補実験により、この欠失を含む断片が遺伝子として機能し、粒幅を小さくすることを明らかにした。また、RT-PCRにより、欠失部分に転写される領域があることを示し、予測ORFを推定したが、生化学的な機能は不明である。
欠失の有無を各種イネ在来品種で調べ、ゲノムの類似性とこれまでに報告のある栽培化関連変異との分布を調べ、ジャポニカ品種に関して、その栽培化過程を推定し、従来の学説とは異なり、ジャポニカイネの起源は東南アジアで、そこから中国に伝わり、そして、温帯ジャポニカが生まれたことを示す新しいモデルを提案した(図2)。
考古学的知見との相違に関する考察を行い、中国長江付近で選抜が進んだ脱粒性喪失形質は、以前我々が報告したqSH1 変異である可能性が高く、考古学的な遺跡が存在しない時代に、既にゲノム上では、栽培化が進んでいた痕跡を論理的に示すことができた。また、qSW5 はqSH1 より古い変異で、イネの栽培化の初期に選抜を受けた遺伝子である可能性が高いことも明らかになった。

成果の活用面・留意点 qSW5 は、今回同定した欠失変異が基本的になく、インディカ品種では機能アリルが多いと推定されるので、インディカ品種由来の飼料イネ等のシンクサイズ向上を狙った品種改良が可能になる。
イネの栽培化の過程をDNA変化から推定することで、主だった形質は遺伝子の機能欠損を人間が利用したことが明らかとなった。突然変異育種の再評価につながる。
インディカイネとジャポニカイネで、ほぼ独立に栽培化が進み、選抜をうけたDNA変異も異なることが明らかになってきたので、栽培化関連変異の再利用育種が具体化する。
ジャポニカイネの起源に関して、東南アジア原産の在来種が古いタイプの遺伝子を多くもつことを明らかにし、その形成過程に関して新しい説を提唱することで、イネの栽培化に関する文化人類学的研究に貢献する。
カテゴリ 育種 品種 品種改良

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