イネ登熟粒の微細組織遺伝子発現解析のための組織単離手法

タイトル イネ登熟粒の微細組織遺伝子発現解析のための組織単離手法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2006~2007
研究担当者 近藤始彦
石丸 努
増村威宏(京都府立大農学部)
中園幹生(東大院農学生命科学)
発行年度 2007
要約  イネ登熟粒をエタノール:酢酸= 3:1による固定と2%Carboxymethylcelluloseによる凍結包埋した後、レーザーマイクロダイセクションを用い、糊粉層とデンプン性胚乳などの微細組織から損傷の少ないRNAを回収することができる。
キーワード イネ、糊粉層、デンプン性胚乳、レーザーマイクロダイセクション、発現解析
背景・ねらい  イネ胚乳の糊粉層とデンプン性胚乳における貯蔵物質蓄積や白未熟粒発生の分子メカニズムを解明するためには、微細組織別の発現解析が有効である。植物の微細組織は切片作成後、レーザーマイクロダイセクション(以下、LMD)によって単離できるが、発現解析のために組織切片から損傷の少ないRNAを回収するためには、固定や包埋法を最適化する必要がある。そこでデンプンを多量に蓄積し、形態維持やRNAの保存が困難であるイネ登熟粒に適用できる固定や包埋法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. イネの開花後7日の登熟粒を、エタノール:酢酸 =3:1で固定後、2% Carboxymethylcellulose(CMC)を用いて凍結包埋し、8μmの横断切片を作成する。本法は、これまで他の組織で汎用されてきたパラフィン包埋法に比べて、固定から包埋までの手順が少ない(表1)。
  2. 本法により得られた切片は、珠心表皮や維管束の形態保存性がパラフィン包埋法に比べて低いが、糊粉層とデンプン性胚乳の形態的な違いは明確であり(図1)、LMDを用いて組織構造を維持しながら、背側の糊粉層(al)やデンプン性胚乳の中心部(ce)の一部を正確に単離できる(図2)。
  3. ショ糖溶液凍結包埋法(切片厚14μm)に比べて、本法では切片厚8μmでも形態を維持することができるため、レーザーによる単離が容易である。
  4. 抽出したRNAでキャピラリー電気泳動を行うと、パラフィン包埋法に比べて18Sと28SのリボソームRNA(図3のピーク3,4)に由来する2つの明確なピークがみられる。すなわち本法により、RIN値(RNA Integrity Number: RNAの品質を表す数値で、最低値が1、最高値が10)が、8.0を越える損傷の少ないRNAを安定的に回収することができる(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本法により単離した50片から、およそ10-30ngのtotal RNAが抽出可能である。
  2. 包埋から切片の作成までは-80℃で保存し、1ヶ月以内にRNAを抽出する。
  3. 本法により得られたRNAは損傷の程度が少なく、マイクロアレイなどの発現解析において確度の高いデータを得ることができる。
  4. 本法は胚乳にデンプンが蓄積し始める時期から登熟盛期までの胚乳(開花後6-12日)に適用できる。
図表1 226663-1.jpg
図表2 226663-2.jpg
図表3 226663-3.gif
図表4 226663-4.gif
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