タイトル | ラクトフェリンによる線維芽細胞のコラーゲンゲル収縮活性の上昇 |
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担当機関 | 畜草研 |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
橘内克弘 高山喜晴 水町功子 |
発行年度 | 2001 |
要約 | ウシラクトフェリンは、線維芽細胞のミオシン軽鎖のリン酸化を亢進させ、そのコラーゲンゲル収縮活性を上昇させる。これはラクトフェリンが線維芽細胞の運動能力を亢進させることを意味する。 |
キーワード | 加工利用、実験動物、ウシ初乳、機能性成分、細胞運動、ミオシン軽鎖リン酸化 |
背景・ねらい | ウシ初乳は、その成分が常乳と大きく異なるため、飲用に用いられない。しかし、線維芽細胞やハイブリドーマを無血清培養する場合、初乳の乳清画分により、培養細胞の維持、増殖が可能であることが報告されるなど、血清に準ずる生理活性を持つことが知られ、その有効利用が期待されている。一方、線維芽細胞によるコラーゲンゲル収縮モデルは、真皮の構造を反映したものであり、創傷治癒のモデル系とされている。 ウシ初乳に多く含まれるラクトフェリンは、抗菌活性や坑炎症活性を持つなど、多機能蛋白質として知られているが、その線維芽細胞に対する機能はほとんど知られていない。そこで、線維芽細胞に対するラクトフェリンの機能についてコラーゲンゲル収縮モデルを用いて検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1. ウシラクトフェリンは線維芽細胞のコラーゲンゲル収縮能力を上昇させる機能を持つことを見いだした(図1A)。 2. 鉄結合型ラクトフェリンと鉄解離型ラクトフェリンのゲル収縮促進能力は、ほぼ同一であった(図1B)。 3. ラクトフェリン刺激(最終濃度1μM)により、30分以内に線維芽細胞のミオシン軽鎖のリン酸化が亢進した。その程度は10nMのリゾフォスファチジン酸(LPA)刺激とほぼ同じであった(図2A)。 4. ラクトフェリンのゲル収縮、およびミオシン軽鎖リン酸化に対する効果は、菌体外酵素C3(Rho阻害剤)、Y-27632(Rhoキナーゼ阻害剤)およびML-7(ミオシン軽鎖キナーゼ阻害剤)により阻害された(図2B・C)。この結果はラクトフェリンがミオシン軽鎖のリン酸化を調節することにより、線維芽細胞のゲル収縮能力を調節していることを、強く示唆している。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 皮膚潰瘍、ケロイドといった難治性皮膚疾患の治療、あるいは皮膚移植の際に、移植片の定着を促すための素材として、ラクトフェリンが利用可能になることが期待される。 2. ミオシン軽鎖のリン酸化は神経突起の伸長、細胞増殖などにも関与しており、線維芽細胞以外の細胞に対するラクトフェリンの新機能の発見につながる。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 加工 機能性成分 |