Lactococcus属乳酸菌プラスミドの選択的除去

タイトル Lactococcus属乳酸菌プラスミドの選択的除去
担当機関 畜草研
研究期間 2000~2001
研究担当者 岡本隆史
小林美穂
野村将
発行年度 2001
要約 Lactococcus属乳酸菌が保有する複数の核外遺伝子(プラスミド)の中から、一種類のプラスミドを選択的に除去する方法を開発した。本法によって、親株よりも増殖的に優れる菌株を作出することができる。
キーワード 畜産物・品質、加工利用、乳用牛、乳酸菌、増殖速度、核外遺伝子
背景・ねらい 発酵乳製品のスターターとして汎用されているLactococcus属乳酸菌は、通常複数の核外遺伝子(プラスミド)を保有している。プラスミドの中には、菌の生育や発酵製品の品質に直結する形質を支配しているものもあるが、産業用菌株としては不必要であったり、好ましくない形質を支配しているものもある。プラスミドの挿入及び除去は、Lactococcus属乳酸菌の育種改良の主要な手法である。プラスミドの除去法としては、高温培養条件下での継代培養や、変異原物質存在下での培養などが知られている。しかし、これらの方法では、分子量が大きくコピー数の少ない必須プラスミドが除去されてしまう確率が高かった。そこで、『同じ複製起点を持つ2種類のプラスミドが、宿主内に共存できない性質(プラスミドの不和合性)』を利用して、選択的なプラスミドの除去法を検討した。L. lactis ssp. lactis biovar. diacetylactis DRC1に内在する最小の分子量のプラスミドpDR1-1は、宿主乳酸菌の増殖速度を抑制する作用がある。そこで、不和合性を利用してpDR1-1の選択的除去を試みた。
成果の内容・特徴 1.
pDR1-1の全遺伝子配列を決定し、複製起点及び複製開始因子を特定した。
2.
pDR1-1の複製起点及び複製開始因子と、エリスロマイシン耐性遺伝子を大腸菌ベクターpBluescriptIIに挿入し、増殖抑制作用のない変異プラスミドpBES22 を作成した(図1)。
3.
pBES22を電気穿孔法でDRC1 wild-type 株(親株)に導入し、継代的に培養すると、pBES22と同じ複製起点を持つpDR1-1を、完全に喪失した変異株を得ることができる(図2)。
4.
作成したpDR1-1除去株のプラスミドプロフィールを調べると、pDR1-1以外のプラスミド保有状況に変化はなく、本法によって選択的にpDR1-1を除去することができる。
5.
pDR1-1除去株(○)の対数増殖期における増殖速度(グラフの傾き)は、全プラスミド除去株(■)と同じで、親株(●)よりも速い。したがって、不和合性を利用した本法により、増殖速度的にはDRC1 wild-typeよりも有利な菌株を得ることができる(図3)。
成果の活用面・留意点 1.
本法によって、不可欠な形質を支配するプラスミドを安定に保有しつつ、目的とするプラスミドのみを除去した菌株の作成が可能となる。
2.
作出した変異株の発酵特性及び長期間の継代培養における遺伝的安定性は、さらに検討する必要がある。
図表1 226733-1.gif
図表2 226733-2.gif
カテゴリ 育種 加工

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