タイトル | 乳牛ふんの堆肥化過程における窒素収支 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
阿部佳之 伊藤信雄 加茂幹男 福重直輝 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 乳牛ふんを吸引通気で堆肥化する場合には、堆肥表面からのアンモニア揮散はごくわずかであり、アンモニアは排液、排気中に移行する。これら窒素の移行割合は、水分調整資材別に最大値で比較すると、モミガラ添加(35.7%)>ふんのみ(29.5%)>オガクズ添加(19.7%)>戻し堆肥添加(14.9%)の順になる。 |
キーワード | 畜産環境、乳牛、堆肥化、窒素収支、水分調整資材、初期水分、吸引通気 |
背景・ねらい | 乳牛ふんの堆肥化処理では環境負荷物質の1つであるアンモニアが発生するため、堆肥化処理過程でアンモニアを回収し、環境負荷低減に向けた技術開発の必要性が指摘されている。 そこでアンモニア回収のための施設設計に資するため、乳牛ふんの堆肥化過程における窒素収支を求め、堆肥系外に出される窒素量について検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 図1に示す431Lの反応槽における1ヶ月間の堆肥化(生ふんに乾燥ふんを添加して水分67%に調整後約290kgを供試)では、吸引通気で堆肥化を行った場合と現行の圧送通気の場合とでほぼ同等の堆肥化が可能である(表1)。 2. 吸引通気を行った場合では、堆肥表面からのアンモニア揮散はごくわずかである。アンモニアのほとんどは通気方向に吸引され、排液、排気中に移行することで堆肥系外に出される(図2)。このことから、反応槽を密閉化しなくとも吸引通気を行うことで、堆肥化過程での窒素収支を把握することができる。 3. 1ヶ月間の吸引通気による堆肥化(生ふんに水分調整資材を添加して水分60、65、70、75%に調整後141~414kgを供試)では、&ふんのみ水分75%&、&戻し堆肥添加水分75%&は高水分により発酵せず、れき汁(堆肥から直接発生するスラリー状のもの)が発生するために排液(れき汁に配管内での結露水が混ざったもので発酵が良好である場合には結露水が主成分となる)のリン含有量が高くなる(表2)。 4. 不明分窒素を含めた堆肥系外への窒素移行割合は、同じ水分調整資材区内では有機物分解率が高いほど窒素移行割合が高くなる傾向にある。水分調整資材別に窒素移行割合の最大値で比較すると、モミガラ添加(35.7%)>ふんのみ(29.5%)>オガクズ添加(19.7%)>戻し堆肥添加(14.9%)の順になる(かっこ内数値は同じ水分調整資材区内での最大値)(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 堆肥化におけるアンモニア回収のための施設設計の中で活用できる。 2. 堆肥の発酵温度が低下することを防ぐために間欠通気に切り換えると、窒素収支のうち不明分の割合が高くなる場合がある(表2)。 3. 吸引通気では排気中のアンモニア濃度が一時的に高濃度になるので、微生物を利用した脱臭施設(ロックウールや堆肥を充填材としたものなど)の場合は、排気を希釈するなどの前処理が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 環境負荷低減 乾燥 乳牛 |