タイトル |
越夏性に優れ、夏秋期安定多収なペレニアルライグラス「八ヶ岳T-21号」 |
担当機関 |
山梨県酪農試験場 |
研究期間 |
1985~2004 |
研究担当者 |
田瀬和浩
山田敏彦
杉田紳一
保倉勝己
岸田諭俊
福沢昭文
菊嶋敬子
横山紅子
小泉伊津夫
菊嶋 孝
駒井文彦
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発行年度 |
2004 |
要約 |
ペレニアルライグラス「八ヶ岳T-21号」は4倍体系統で越夏性、冠さび病・網斑病抵抗性に優れ、乾物収量は「ヤツカゼ」より多収で、とくに夏期から秋期にかけて優れる。本州以南の高冷地、準高冷地で、採草・放牧兼用あるいは放牧用として利用できる。
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キーワード |
飼料作物育種、イネ科牧草、ペレニアルライグラス、越夏性、放牧
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背景・ねらい |
畜産の資源循環型農業への回帰として放牧が見直され、土地条件に制約がある本州以南の地域において放牧を行う場合、再生が旺盛で栄養価の高いペレニアルライグラスの利用が適している。しかし、ペレニアルライグラスは夏季高温条件下では適応性が低く、夏枯れ等により夏期から秋期にかけて収量性が劣るという問題がある。そこで特に夏期の収量性、病害抵抗性に優れる品種を育成し、ペレニアルライグラスを用いた放牧の安定化に寄与する。
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成果の内容・特徴 |
- 出穂始は4場所平均が5月15日で「ヤツカゼ」と同様に「中生の早」である(表1)。
- 3年間合計乾物収量は「ヤツカゼ」よりやや多収である。また季節別乾物収量も全体としては春期、夏期、秋期のいずれの時期においても「ヤツカゼ」より優れる(図1)。
- 収量の永続性は、利用1年目乾物収量に対する利用3年目の比および秋の被度からみて「ヤツカゼ」と同程度である(表1)。3年間合計乾物収量は「ヤツカゼ」よりやや多収である。また季節別乾物収量も全体としては春期、夏期、秋期のいずれの時期においても「ヤツカゼ」より優れる(図1)。
- 越夏性は「ヤツカゼ」よりやや優れる。冠さび病は「ヤツカゼ」の“中”より優れ“強”で、網斑病は「ファントム」より優れ、葉腐病は「ヤツカゼ」と同程度である(表1)。
- 越冬性は「ヤツカゼ」と同程度で、耐雪性は「ヤツカゼ」と同じ“極強”、耐寒性は「ファントム」と同じ“中”、雪腐大粒菌核および小粒菌核病抵抗性も「ファントム」と同じ“強”である(表1)。
- 採草・放牧兼用利用適性として1番草の出穂期刈利用および2番草以降の多回刈利用での2年間合計乾物収量は「ヤツカゼ」よりやや優れる。また踏圧抵抗性も「ヤツカゼ」より優れる(表2、表3)。
- 乾物分解率、粗蛋白質は「ヤツカゼ」と同程度である(表1)。
- 採種性は「ヤツカゼ」より優れる(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 適応地域は本州以南の高冷地、準高冷地で、採草・放牧兼用あるいは放牧草地に適する。普及見込み面積は6,000haで、将来的には「ヤツカゼ」と置き換える。
- 播種翌年の春は旺盛な生育を示すので、採草・放牧兼用利用の場合は1番草の刈遅れに注意し、放牧利用の場合は春先の放牧開始を早めに行う。また、温暖地での夏期の施肥はひかえる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
育種
飼料作物
施肥
耐寒性
抵抗性
播種
病害抵抗性
品種
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