家畜ふん尿の堆積堆肥化処理に伴うアンモニア、メタンおよび亜酸化窒素の発生

タイトル 家畜ふん尿の堆積堆肥化処理に伴うアンモニア、メタンおよび亜酸化窒素の発生
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2002~2006
研究担当者 森 和彦(熊本畜産研)
石橋 誠(熊本畜産研)
長田 隆
田村 忠(道立畜産試)
白石 誠(岡山総畜セ)
福本泰之(畜草研)
発行年度 2004
要約 広範に採用されている堆積型堆肥化処理からの環境負荷ガス発生を、ふん尿堆積物中の窒素および有機物(VS、強熱減量)をベースに算出した。アンモニア発生は肥育豚と採卵鶏から顕著(236 - 366 gNH3-N/kgN)であり、メタンは搾乳牛で発生が大きく(36 - 40 gCH4/kgVS)、亜酸化窒素は豚で高く(12 - 37 gN2O-N/kgN)、鶏で低い(0 - 0.7 gN2O-N/kgN)。
キーワード 畜産環境、家畜ふん尿、NH3、CH4、N2O、温室効果ガス
背景・ねらい 家畜ふん尿に起因する広域への環境負荷として、酸性雨原因物質としてのアンモニアと温室効果ガスとしてのメタンと亜酸化窒素が問題となっている。特に発生が顕著と想定される堆肥化処理からの各ガスの定量的な把握とその発生実態の解明は緊急課題である。総合的に環境負荷の少ない家畜ふん尿管理技術開発の礎として、また、京都議定書に定められたインベントリー策定の算出基礎としての各ガス発生原単位を算定する。
成果の内容・特徴 1.
堆積型堆肥化処理からの環境負荷ガス発生を大型のチャンバーを用いた測定システムを採用して算定した。主要畜種のふん尿混合物1m3以上を標準的な含水率(図1)に調整した後にチャンバー内に堆積して2-3週毎に切り返し、一定の通気量で換気を行い、2-6ヶ月間の堆肥化期間中に10分程度のインターバルで当該ガスの発生量を連続測定した。
2.
堆肥化開始時の温度条件を考慮し、夏期と冬期(冬期発生のほとんど無い搾乳牛ふんは夏期に2回)に試験を行い、各畜種のふん尿堆積物中の窒素を基準にアンモニアと亜酸化窒素発生係数を、また有機物(VS、強熱減量)を基準にメタン発生係数を算定して発生原単位とした。
3.
堆肥化期間中の当該ガス発生速度には大きな変動が認められる。全ての畜種の堆肥化で、アンモニアとメタンは堆肥化初期に高く、亜酸化窒素では堆肥化中期(1-2ヶ月)以降に発生の極大が見られる。
4.
搾乳牛のふん尿堆肥化からの発生は、アンモニア、亜酸化窒素およびメタンが、それぞれ 44 - 91 gN/kgN、6 - 16 gN/kgN、36 - 40 gCH4/kgVSと算定された。畜種間で比較するとメタン発生が顕著であったが、過去の報告事例ほどの大きな発生がない(図1)。
5.
肥育牛のふん尿堆肥化からの発生は、アンモニア、亜酸化窒素およびメタンが、それぞれ 11 - 36 gN/kgN、13 - 16 gN/kgN、0.4 - 2 gCH4/kgVSと算定された。(図1)。
6.
肥育豚のふん尿堆肥化からの発生は、アンモニア、亜酸化窒素およびメタンが、それぞれ 236 - 254 gN/kgN、12 - 37 gN/kgN、1.5 - 1.6 gCH4/kgVSであり、畜種間で比較するとアンモニアと亜酸化窒素発生が顕著で、特に冬期堆肥化時に大きな亜酸化窒素発生が見られない(図1)。
7.
採卵鶏のふん尿堆肥化からの発生は、アンモニア、亜酸化窒素およびメタンが、それぞれ 268 - 366 gN/kgN、0 - 0.7 gN/kgN、1.2 - 1.5 gCH4/kgVSであり、亜酸化窒素発生が極めて小さい(図1)。
成果の活用面・留意点 1.
家畜排泄物中の窒素と強熱減量から、堆肥化処理時の各ガス発生量(NH3、CH4、N2O)を算出できる。示されたデータの一部は日本国温室効果ガスインベントリーに採用されている。
2.
ふん尿全体からの温室効果ガス発生総量は国家総排出量の1%近いため発生削減が期待される。各ガス発生係数が畜種や堆肥化時の環境条件で大きく異なることから削減方策が検討できる。
3.
本成果は、プロジェクト研究地球温暖化イニシアチブにおいて北海道立畜産試験場、岡山県総合畜産センターおよび熊本県農業研究センター畜産研究所との共同研究で得られたデータに基づくものである。
図表1 227025-1.jpg
カテゴリ 管理技術 乳牛

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