タイトル | 地球温暖化がわが国各地域における鶏肉生産に及ぼす影響予測 |
---|---|
担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2002~2005 |
研究担当者 |
山崎 信 村上 斉 中島一喜 阿部啓之 高田良三 栗原光規 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 気候予測値からの月平均気温の変動によるわが国各地域のブロイラーの産肉量への影響を推定すると、地球温暖化の進行によって生産低下の大きくなる地域が西日本において拡大し、東北においても2020年頃から影響が現れることが予測される。 |
キーワード | 地球温暖化、鶏肉生産、暑熱、メッシュ気候データ、肉用鶏 |
背景・ねらい | 二酸化炭素及びメタンなど大気中の温室効果ガス濃度上昇に伴う地球温暖化が懸念されている。現在の肉用鶏生産においても夏季の暑熱による生産性低下は大きな問題であるが、今後進行するであろう地球温暖化の影響の規模及び程度の推定はその対策等に必要と考えられる。そこで、月平均気温の変動予測をもとに、将来の鶏肉(ブロイラー)生産に及ぼす地球温暖化の影響を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 将来の気候予測値としては、4つの気候モデルの予測結果を10×10km単位でメッシュ化した「気候変化メッシュデータ」(Yokozawaら、2003)を、現在の値は「メッシュ気候値2000」(気象庁、2002)を解析に用いる。夏季(7, 8及び9月)について、データベース内の気温の値から各メッシュ、年代ごとに4つの気候モデルによる値を平均する。この計算値から所定の温度域に該当するメッシュを抽出し、地図上に図示するプログラムを用いて解析する。 2. 4週齢のブロイラーを、湿度が40, 60及び80%、気温が23、28及び33℃の環境制御室に収容し、6週齢まで飼養する。試験終了時の胸肉及び腿肉重量を測定する。産肉量は、環境温度の上昇とともに減少する。各湿度において環境温度が23℃の時の産肉量を100として、28及び33℃の時の相対値を求めると、湿度間に差は認められないことから、各湿度の値を平均し下記の回帰式を導き出す。 y = -0.3239x2 + 15.042x - 74.632(y=23℃の時を100とした産肉量;x=気温(℃)) この式より、産肉量が5%低下する気温は27.2℃、15%低下する気温は30.0℃と算出し、23℃未満(影響なし)、23∼27.2℃(0∼5%低下)、27.3∼30.0℃(5∼15%低下)、30.0℃以上(15%以上低下)のメッシュを色分けして示す(図1)。 3. 各月とも年代の経過とともに産肉量への地球温暖化の影響が大きくなることが予測され、特に7及び8月は西日本において産肉量が5%以上低下する地域の拡大が懸念される。さらに、現在は産肉量が低下する気温ではない東北地方も、年代の経過とともに産肉量の低下する地域になる可能性が示される。 4. 日本列島を東経138度で東西に分け、産肉量が低下する地域の割合を計算すると、特に西日本において、現在みられない15%以上低下する地域が2060年には1割出現する。 5.九州及び東北地方はわが国の鶏肉生産の半分以上を生産する主要地域であるが、今後とも高い生産を維持するためには地球温暖化を考慮した飼養法の改善が必要であると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 畜舎等を新設する場合に、将来の気温上昇を考慮した暑熱対策計画作成に資することができる。 2. 本予測は月平均気温から推定したものであり、最高気温、最低気温等からの検討も必要である。 |
図表1 | ![]() |
カテゴリ | 環境制御 データベース 鶏 |