タイトル |
牛ふんバイオマスから水素を生産できる |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
横山 浩
荻野暁史
守谷直子
田中康男
和木美代子
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発行年度 |
2006 |
要約 |
種菌を接種することなく牛のふん尿スラリーを75℃で嫌気発酵させると、水素消費細菌の活性を抑制しながら、牛ふんに内在する水素生産菌により水素を生産できる。
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キーワード |
バイオマス、資源回収、水素、家畜排泄物、畜産環境
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背景・ねらい |
近年、有機性廃棄物から微生物を利用した水素エネルギーの回収が注目されており、水素発酵と呼ばれている。家畜排泄物中には水素の回収を阻害するメタン菌などの水素消費細菌が多種・多量に存在するため、家畜排泄物の水素発酵には技術的困難が伴う。そこで、牛ふんからの新しい資源回収法の確立に向けて、水素消費細菌を抑制しながら水素を生産する水素発酵法を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 牛ふんには水素生産菌が元々含まれていると推測されるので、牛糞に内在する水素生産細菌群をそのまま水素発酵の種菌として利用した。種菌の添加なしに2Lの培養器を用いて、牛ふん尿スラリー(固形分18 g/L)を様々な温度で嫌気培養した結果を図1に示す。55-75℃の温度で嫌気培養した場合、内在性の水素生産細菌群を活用して水素を生産できる。既知の60℃温度ピークに加えて、牛ふん尿スラリーでは75℃に新しい第2の温度ピークが存在する。60℃と75℃発酵において、メタン生成は見られない。
- スラリー中の水素消費細菌による水素消費の抑制は、水素生産において必須である。図2は、リアクターのガス相における水素濃度の経時変化を示している。60℃発酵では、4日後をピークとしてその後、水素消費細菌により一旦生産された水素が消費され水素濃度が低下する。しかし、スラリーを75℃で発酵させると水素消費細菌の活性は抑制され、水素濃度が低下せずに維持される。従って、75℃水素発酵は水素生産菌の活性を保持しつつ、水素消費細菌の活性を抑制できる新しい水素発酵法である。
- 可溶化の目安である揮発性脂肪酸(VFA)の総生成量は60℃発酵の方が75℃発酵よりも多く、VFAのなかで酢酸が両条件下で主に生成される(図3)。
- 水素生産の至適pHは、60℃と75℃発酵で共にpH7.0前後である(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 牛ふんからの新しい資源回収法の開発に向けた基礎資料となる。
- 水素発酵により内容物の加水分解と酸生成が促進されているため、水素発酵後の消化液はメタン発酵の良質な基質となり、メタン発酵が高速化されると推測される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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